(2) 鉄道事業者の駅等における介助業務の事例
1] 受け入れ体制と利用方法
JRグループの駅では、高齢者や障害者の乗客に対する対応は各駅の助役が対応しているというケースがほとんどであった。今回ヒアリング対象とした駅は、JR各社の主要駅であり、複数の助役がいる駅であった。また、出札係や乗車券の販売窓口等の担当者も複数名おり、駅全体で30名〜100名程度の職員が勤務している駅が多く、手の空いている職員がその場で対応することが比較的容易な環境にある駅であった。
こうした駅の場合は、高齢者や障害者が突然に利用申し込みをしても、ラッシュ時や早朝、深夜等の人手が足りなくなる時間を除いては、すぐに対応できる場合が多いが、主要駅の隣の駅等周辺の駅では、絶対的な職員数が足りないため事前に予約等がないと少しお待ちいただくことがあるというのが実態のようである。
私鉄では、JRに比べて早くから合理化を進めており、自動改札機の導入等により無人駅となっている駅が多い。今回の調査対象駅は、私鉄についてもターミナル駅であったので、駅で勤務している職員数が比較的多い駅がほとんどであった。
例えば、ある駅では、管区制をとっており、A駅とその周辺の駅10駅程度をA駅管区としてA駅で一括管理しており、無人駅のB駅には、改札口近くに専用のインターホンを設置し、サポートが必要な乗客は、インターホンで呼び出しをするとA駅につながり、職員がB駅に向かうといった体制を作っていた。
地下鉄では、構造上階段等の段差が多くなる傾向にあるが、後からエレベーター等の設備を整備することが難しいといった側面もある。今回の調査対象駅では、比較的近年開通した路線が多く、エレベーターやエスカレーター等のバリアフリー設備が最初から整備されているケースが多かった。こうした近年整備された路線では、受け入れ体制についても通常の業務の範囲内で対応しているケースが多かった。
公営の地下鉄のC駅では、車イス使用者がホームと車両との段差を乗り越えられるように、乗車補助板を担当の職員が用意して乗車駅から降車駅まで同乗するといった対応をしていた。
地方都市においては、市内線等において路面電車が市民の足として定着している都市も多いが、多くの場合路面電車はワンマン運転であり、各停留所には職員がいないケースがほとんどである。こうした路面電車を路線に持つ事業者では、事前に利用依頼があれば職員が付き添うケースもあるが、基本的には高齢者や障害者の乗客の対応は運転手が対応することとなっており、運転手だけでは対応できない場合には、近くの乗客に応援を求めるといった対応をしていた。この事業者では、近くの乗客も快く応援してくれるとの意見が聞かれた。