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(2) 視覚障害者のニーズ

 

視覚障害者にとって公共交通機関を利用する際に最も危険な場所は、鉄道駅のホームである。毎年ホームからの転落事故が発生しており、不幸にもその内何名かの方が命を落としている。

こうしたことより、ホーム上での安全確保が最も大きな課題である。

ホーム上での安全確保のためのニーズとしては、ホーム上への誘導ブロックの設置等が考えられる。しかし、誘導ブロックは視覚障害者にとっては、あくまでも点としてしか認識できず、その点を外れた場合にどちらへ行けば安全な場所か危険なホーム端かを判断することはできない。よって、音声による警告、案内等の併用が必要となる。

また最近開業した地下鉄等では、ホーム上にホームドアを設置して列車が到着するまでドアが開かないようにしてホーム上での転落事故を防止している例もある。視覚障害者のニーズとしては、こうした設備をすべての駅に設置することによりホーム上での安全性を確保してほしいとの意見があった。

近年、鉄道事業者の駅においても自動化技術の進展により自動改札機が普及し、またタッチパネル式の券売機も普及しつつある。健常者にとってはこれらの機械は便利なものであるが、視覚障害者にとっては極めて不便な機械であるとの指摘もあった。実際にタッチパネル式の券売機は視覚障害者の利用をまったく考慮していないため、視覚障害者にとってはどこに何が表示されているのかがまったく認識できない。また、自動改札機についても、乗車券の投入口等がわからないといった問題がある。さらに視覚障害者の場合目的地までの料金表示が文字情報でしか提供されていないので料金がわからず、最低区間の料金の乗車券を購入して目的地で清算をするという方法で対応している人も多い。この場合、自動改札に乗車券を通すとブザーが鳴って扉が閉じてしまうので、人によっては混乱状態に陥ってしまうといったケースもあるとの指摘があった。タッチパネル式以外の券売機や有人の改札は各駅で設置されているが、こうした設備の位置を示す音声案内等の整備に対する要望もあった。

改札内での問題点としては、自分の乗車するホームの位置が文字情報による表示しかないためわからないといった指摘があった。同様のことは電車の車内についてもいえる。最近の車両は、ドアの近辺に発光ダイオード等による表示機を備えており、車内アナウンスは控えめにしているケースも多い。視覚障害者にとっては、自分の目的地の駅に着いたのかどうかが認識できず、乗り過ごしてしまうケースもあるとのことであり、乗り過ごして戻る時に慣れない駅で混乱し、転落事故を起こすといった例もあるという。

このように、視覚障害者にとっては点字による表示がとかく対策として注目されがちであるが、音声による案内がより重要なニーズであるとの指摘があった。

点字については、幼少の頃から視覚に障害があり盲学校等での教育を受けた者は読み書きが可能であるが、成人してから何らかの要因で視覚障害となった者の大半は点字の読み書きができないといった実態もある。

 

 

 

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