2-6. 障害者の個別のニーズ
今回のアンケート調査では、結果として高齢者の回答が多かったため、障害者については相対的に十分なサンプル数を確保できず、障害別の個別のニーズについては統計的に必ずしも十分把握できない部分もあった。
そこで、より詳細なニーズを把握するため、肢体障害者(車イス等)と視覚障害者にヒアリング調査を実施し、公共交通機関利用時の障害別ニーズを把握した。
(1) 肢体障害者(車イス等)のニーズ
肢体障害者については、車イス(手動または電動)の使用者と歩行障害のため杖等を使用する者とに分類される。
同じ肢体障害であっても、車イス使用者と杖使用者ではニーズが異なる。例えば、比較的高低差の小さい段差を解消するためには、スロープが利用されることが多いが、車イスにとっては、スロープは極めて利用しやすいものであるが、歩行障害の杖使用者にとってはむしろエスカレーターの方が利用しやすい。
近年、車イス対策としてスロープの設置が進められているが、歩行障害者にとってはかえってすべるため危険という状況が発生している。
また、肢体障害者にとっては垂直移動の障壁の解消だけにとかく注目がされがちであるが、エレベーターのボタンや券売機のボタンの大きさといったことについても配慮が必要である。特に、車イスに乗った状態(座位)でボタン操作をする場合には、健常者が使用するボタンのサイズでは小さすぎて、せっかくエレベーターが設置されていても目的階のボタンが操作できないといった問題が生じている。
券売機についても、最近は車イス使用者や高齢者、子どもに配慮した高さの低い機械が設置されるようになってきたが、券売機下部に車イスが入る切れ込みがないため、ボタンに手が届かない等の問題もある。
アンケートの中でも、トイレの数についての意見が多かったが、障害者用トイレについても、一見車イス対応はしているものの、車イスで中に入ると扉が内開きのため閉められないとか、外開きであっても電動車イス等の場合に扉が完全に閉められないといった問題が生じている。
さらに、視覚障害者向けの誘導ブロックが車イス使用者にとっては不用意な振動により腰を痛める等の原因となりうるとの指摘もあった。
階段の昇降等に伴う介助については、手伝ってもらえれば助かるという意見がある一方で、知らない人に車イスに乗った状態で持ち上げられるのは恐いといった意見もあり、駅職員や介助者が付き添う等の配慮も必要とのことであった。