1-6. 鉄道駅等における交通ボランティアの必要性
前述のように、高齢者や障害者の自由な移動を支える「交通ボランティア活動」には、様々な活動があるが、より多くの人が利用し、かつ大量輸送公共交通機関である鉄道等におけるモビリティの確保は、今後高齢化の一層の進展や障害者と健常者が共に暮らしていくことが可能な「ノーマライゼーション」社会を実現する上で、非常に重要であると考えられる。
こうした観点より、当財団では鉄道駅等における障害者対応型エレベーター・エスカレーター整備事業につき、「交通施設利用円滑化対策費補助金」制度に基づきJR、民間鉄道および空港・旅客船ターミナル事業者等に対して補助を行ってきた。さらに、平成10年度には交通施設バリアフリー化施設整備費補助金制度が設けられ、国および地方自治体による鉄道駅のエレベーター・エスカレーターをはじめとするバリアフリー化施設整備を促進する制度が拡充された。しかし、ハード面の整備がいくら進んでも、高齢者や障害者が円滑に移動するには、ちょっとした周囲人達等の介助が必要な局面は多く、こうしたソフト面でのバリアフリー化を進めるため、当財団では、平成7年度より全国で年2回程度主として鉄道駅等の交通ターミナルにおいて「交通ボランティア育成講座」を開催してきた。「交通ボランティア育成講座」では、障害者とのふれあい、障害の疑似体験、介助の講習をとおして障害への理解を深め、今後の実践活動ができるように、実際に駅等の交通施設内における高齢者・障害者の駅構内及びホーム上の移動のお手伝い乗車券購入のお手伝い、アイマスクをつけて盲導犬に誘導される等の体験をしてもらっている。
しかし、高齢者や障害者の公共交通機関利用をより円滑なものにするためには、最も利用機会が多くかつバリアフリー化が求められている鉄道駅を中心に、上記以外の活動を含めたソフト面でのバリアフリー化の一層の充実が必要で、その中でボランティアに期待されるところも大きい。
そこで、本調査では当年度はいろいろな「交通ボランティア活動」の中で、特に鉄道駅等における「交通ボランティア活動」に着目し、広く関係者の活動状況、意見についての実態把握を行うこととした。