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2. ドイツ

 

1953年に制定されたドイツ連邦基本法(憲法)第3条第3項は「何人も障害の故に不利益を受けてはならない」と「差別の禁止」を定めている。基本法の中で、公共交通およびその利用条件に対して、また、車両および施設に対して、障害者を冷遇しないよう、さらに障害者のアクセス困難等に対する解決策を追求するよう、全般にわたって要求している。

連邦交通省はこれについては直接的な責任を有していない。その理由は、公共旅客近距離輸送には州および市町村が、鉄道輸送(特に遠距離輸送)にはドイツ鉄道株式会社といった、各交通機関には直接的に責任を有する機関がそれぞれ存在するからである。実際は、これら交通機関だけでなく、連邦交通省においても基本法に基づきさまざまな措置を講じている。

連邦政府は、移動制約者が公共および民間の交通機関を全面的に利用可能となるよう政策として取り組んでいる。

 

(1) 法律および政令等

1970年「リハビリテーション促進のための連邦行政行動計画」により、公共交通機関を移動制約者のアクセス可能なものにするよう定めている。そこで、鉄道については「鉄道建設運行令第2条第3項」で施設および車両を移動制約者が利用しやすいようにしなければならないと規定している。その他の市電等の軌道系交通機関については「軌道建設運行令第3条第5項」で、建築基準として移動制約者が利用しやすい施設や車両とするほかに、移動制約者に配慮した設備には標示をつけなければならないと規定している。但し、エレベーターやスロープ等のどれを駅に整備するべきかについては、一律の指導は行っていない。

これら政令を具体化するために、1971年の「地域交通助成法第3条第1項」では、都市内交通において移動制約者に配慮した整備への助成が法律で定められている。助成対象の例として、駅やターミナル等の障害の除去工事やエレベーター設置などである。具体的な対象は州が判断し、費用負担率は連邦75%、州が25%と法律で定められている。なお、都市間交通については、「都市輸送助成法」がある。

 

1974年の「雇用、職業および社会における障害者の統合を確保するための法律」(連邦労働社会秩序省主管)があり、1979年に追加項目として、旅客輸送(近距離鉄道の場合は2等車)では障害者および介助者の乗車、障害者の手荷物等の輸送を無料と定めた。この場合、近距離輸送は州が、遠距離輸送は連邦が収入補填するとしている。

 

1990年10月30日のドイツ連邦議会では、すべての交通手段を移動制約者に利用可能とすることを要求する次の法令等に基づいて、交通政策を実施しすることを決定した。

●「移動制約者の移動可能な改善と移動の促進」に関するEU提案

 

 

 

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