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8章 法制度(フランス・ドイツ)

 

1. フランス

 

フランスの移動制約者に関する法律については、1960年代から移動制約者が交通環境整備への要望が高まり、それらに応えるかたちで1975年にまず「障害者基本法」が制定された。その後さまざまなデクレ52等が制定され、さらにEUおよび国連においても制令等もできており、フランスにおいては法律面の整備が進んでいる。

 

(1) 法律および政令等

1] 建築物および公共交通全般

1975年の障害者基本法では、公共施設と公共交通機関について移動制約者に配慮した整備を行うよう定められている。それらを具体的に示したものが1978年12月9日デクレであり、さらに詳細な内容を示したものが1980年4月18日アレテ53である。これらは輸送サービスおよび輸送設備の整備プログラム企画担当当局が、障害者運輸連絡委員会(COLITRAH)委員長に、整備計画報告書を毎年3月1日までに提出するよう定めている。さらに、報告書には整備完了予定日を表で示し、かつ該当年の12月31日の進捗状況を明記しなければならない。

実行しなかった工事あるいは完成しなかった工事については、報告書で遅延の理由、竣工予定日あるいは工事中止の理由を明記しなければならない。

なお、1980年4月18日アレテでは、陸上輸送だけでなく空海路輸送についても前述のような措置が適用される。

1991年7月13日法(法91-663号)では、障害者の住宅、職場、公共施設などへのアクセシビリティについての措置が定められており、それらについて詳細に示したものが1994年1月26日デクレ(デクレ94-86号)である。さらに、デクレ94-86号の詳細を示したものが、1994年5月31日アレテおよび1994年7月7日通達である。

デクレ94-86号および関連法令は、1978年のデクレの内容を加筆修正し、視覚障害者について充実させた内容となっている。また、障害者を社会の一部に組み入れること(インテグレーション)を方針としている。さらに、移動制約者のアクセスが十分確保されていない場合は、交通事業体などは運行免許を剥奪されることがあると定めている。

整備すべき設備として、街の公衆便所や現金自動支払機、自動精算機、券売所等のリストが補足されている。

建築物については、新築および既存の改修工事等にもアクセシビリティ整備を義務づけている。それは、都市計画法を改正し審査制度を定めることで、整備の義務づけを行っている。その審査制度とは、

●工事前の建築許可申請に代わる工事許可証の交付

 

52 大統領及び首相が発する命令

53 首相より下級の機関が発する命令

 

 

 

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