6章 スウェーデン、イギリスでの取り組み(補足説明)49
1. スウェーデン
1979年に障害者のため公共交通機関の改善を義務づけた法律「公共交通機関の障害者施設に関する法律」を世界で最初に制定された。しかし、改善費用は交通事業者が負担するため思うように改善が進まず、その対策として、1988年に国庫補助制度が導入された。
1979年の法律をもとに、1982年には主要な交通機関の規則が制定された。これは、改善を義務化したもので、立入検査ができ、改善されていない場合は改善命令が出される。但し、改善がなされていない場合の罰則は特にない。当時、欧州のなかで義務的な規則を設けている国は他になかったことから、かなり先進的な対策を講じていたといえる。
スウェーデンでの移動制約者の移動支援システムは、法律による義務化をもとに、整備が早く進んでおり、以下、バスとSTサービスについて説明を加える。
(1) バス
1983年(交通機関の規則制定直後)に実施した調査では、ステップの高さに関して1段目を低くしているバス(ワンステップバス、床面高80cm)は全路線バス車両の2.5%にすぎなかった。その後1988〜1989年に行った調査では、既存の路線バス車両の40%以上、新規の路線バス車両のほぼ100%が、ワンステップ化をはじめとする他の規則内容も満たす水準まで整備が進んだことが明らかになった。(床面高の問題は、ステップの改良とともにバス停留所の嵩上げをして対応。)そのような短期間で得られた成果は、79年の法律および規則の効果とうかがえる。
(2) STサービス
1960年代に導入され、1979年にはすべての市町村50で運行されるようになった。位置づけとしては、市町村による福祉サービスの一環とされており、各市町村が運営方法、利用資格、利用条件等を決めて運行している。STサービスは、1980年に制定された「社会サービス法」(社会福祉に関する基本法)のなかで、市町村がSTサービスを提供することを義務づけている。義務化については他の欧州の各国にはみられず、スウェーデンの取組みが徹底している。但し、使用される車両はリフト付の専用車両もあるが、多くが一般タクシーで、STサービスがタクシー利用者の運賃補助に近いものといえる。
財源は、市町村の一般財源および運賃収入、国からの補助金である。補助金は、総費用の最高35%まで補助される。
市町村提供のSTサービスは市町村内の移動に限定されるため、県域規模での移動は「県単位のSTサービス」、全国規模での移動は「全国STサービス」が提供される。
以上のSTサービスは市町村および国にとって費用負担が大きいため、利用者にはSTサービスを公共交通機関へのアクセス手段として位置づけてもらうよう対策が検討されているものの、思うようにいかず、補助金の増加が問題視されている。
49 「交通と福祉」松尾光芳、小池郁雄、中村実男、青木真美、をもとに取りまとめた
50 「コミューン」と称される