日本財団 図書館


(5) 障害者から見た評価

ヒューマンネットワーク・熊本は、市の交通システムについて次のように評価している。同団体は、ノンステップバスおよび低床路面電車等の導入を市民や市当局に積極的に働きかけるなど、活発な活動を繰り広げてきた。

 

1] バス

移動制約者対応のバス(ノンステップバス、リフト付バス、ワンステップバス)が、20〜30分に1本の割合で運行されるようになり、以前と比較して利便性が高まった。しかし、北九州市では路線バスの全車両がワンステップバスであり、いつでも乗車できる安心感があるが、熊本市ではまだそこまでに至っていない。

健常者は、リフト付バスについて、車いす使用者専用の車両と考えてしまうことが多い。

 

2] 路面電車

低床車両の導入は、大きな前進と評価している。導入後の車いす使用者の利用は1日に1人と発表され、マスコミでは「高額な車両費にもかかわらず、利用者は1日1人」といった批判的な捉え方をしたが、障害者のあいだではその数値だけでも低床車両の効果は大きいと思っている。また、低床車両は、車いす使用者のみならず、一般の人にとってもメリットが大きいことを、マスコミが十分認識していないことは残念であるとしている。

問題は、停留所の構造で、特に段差よりも、車両と停留所の間隔が広い点である。同団体が独自に行った調査45によると、停留所は、道路中央に位置する島型であり、かつその幅員が狭くなっていることから、危険性が高いことなどを指摘している。

 

3] 福祉タクシー

福祉タクシーについては、台数の不足を感じる。

タクシーの位置づけは、障害の程度によって異なる。重度障害者は近距離および遠距離のドア・ツー・ドアの移動手段としてタクシーを利用する。比較的、活動できる障害者は基本的な移動は公共交通機関を利用し、それらを補完するものとしてタクシーを利用する。そのため、公共交通が充実している市内はそれらで移動し、遠距離の場合はタクシーを利用するため、タクシー券(補助額に上限がある)の助成効果があまり高くない。

 

4] 今後について

バス、路面電車についてノンステップ化が進められているが、これからはすべての人にとっての利便性を高めることが必要である。乗客の感想では、座席に座りにくくなった、通路が狭くなった等の声があり、これらを改善していかなければならない。

そのような意味でも、これからは「障害者のため」という考えではなく、「すべての人にとってよいもの」という視点で整備を進めてほしい。

なお、移動支援システムに関わらず、まちづくりにおいては行政と障害者の連携が非常に重要であることを理解してほしい。連携することでお互いが歩み寄り、さらに納得しながら妥協点を見出せ、質の高い整備ができると考えている。

 

45 「熊本市交通局電停実態調査」1997年

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION