4] 建物・道路
国の法律で必要となる要件が決まっている。ナントでは、県の安全とアクセス委員会(Security & Access委員会)が監督権限を有している。県の委員会にも身体障害者団体のメンバーが加わっており、身体障害者の同意がなしに、建物・道路をつくることは難しい。
1993年以前は、既存建物の改良等に県の施策の中心がおかれていたが、1994年以降は、新設建物についても県が指導するようになっている。最初から障害者対応である建物を作るほうが、後で改良を加えることよりも安価に済むことを認識したためである。ナント市でも、94年以前の建物・道路の改修に35万フランを投入している。
(4) ナントでの移動制約者対策の今後
1] 市の全体方針
市では、2005年までに全ての公共交通機関において、少なくとも70%以上の比率ですべての人がアクセス可能な状態にする計画を立てている。障害者の社会参加を促す意味からも、公共交通の利用を勧めていくことが施策として重要と認識している。また、車いす使用者が公共交通を利用していくことで、社会全体が車いす使用者のことをこれまで以上に理解するようになると市は期待している。一方、STサービスなどの専用交通を必要とする人々も厳然として存在するので、この分野も充実させていくとしている。
2] 公共交通に関する市の施策
公共交通のうち、LRTについては、2000年から2005年にかけて、さらに18.6km延伸し、総延長45kmとする予定である(図 2-3参照)。具体的にはナント市郊外に走る環状高速道路の出入口とLRTを接続させる予定である。これにあわせてLRTの数も46から75に増やし、かつ、増加分については、すべて低床車両を導入する予定である。公共交通のうち、バスについても、更新分(約15台)は全て低床車両とする予定である。
3] STサービスに関する市の施策
一方で、STサービスの充実も必要とされているが、現状のところ、それをどの程度充実させていくべきであるか、市では再検討を行っている。その背景として、次の2点が挙げられる。第一に、STサービスの需要が供給を大きく上回っている点である。STサービス利用者のうち、視覚障害者、精神薄弱児(者)には、ノンステップバス、LRTの方を利用してもらえないか、市で検討を開始している。例えば、視覚障害者にはなるべくバス、LRTを利用してもらう方向で進める。また、行きはSTサービス、帰りはバス、LRTという組合わせもあると考えている。第二に、STサービスに関する財政負担が大きくなっている点である。STサービスは1回10フランで提供しているが(市民の一員として、相応の対価を支払うという原則にたっている)、コスト的には1回100フランかかる。また、ミニバスで対応できない部分は、タクシー利用ということになっている。市としては、障害者団体が求めている「全ての人が社会参加できるようなアクセスの改善」、障害者個人が求めている「自宅まで迎えに来てくれるサービスの充実」という二つの要望をどのように両立させていくか、検討していきたいとしている。