しかし、ドイツ、フランスの事情については、LRTやノンステップバスなどの話題はよく耳にするものの、わが国では必ずしも十分な情報が提供されているとは言い難い。そこで今回は、フランスおよびドイツの特徴ある諸都市を選び、そこでの交通のバリアフリー状況の実地調査をベースに、国などでの制度的な裏付けや、障害者団体の動向等も含めて、全体像の把握を試みた。両国の特色を見ると、フランスは、法律で「交通権」を認めている国であり、LRTに力を入れている都市が多い。一方、ドイツは、ノンステップバスの先進国であると同時に、STサービスにも特徴のある動きが見られる。
このような特色を踏まえて、フランスでは、LRTの拡充に積極的に取り組んでいるナントおよびストラスブールを調査対象に選定した。両市は、環境対策として、LRTを組込んだ公共交通中心の大胆なまちづくりを断行した都市でもある。あわせて、大都市における取組みを考察する観点から、パリを中心とするイルドフランス圏の状況を調べた。
ドイツでは、公共交通の拡充・再整理、駅等の環境整備を進めているシュツットガルトおよびフランクフルトを、障害者の交通に関する取組みに力を入れているハイデルベルグを選定した。また、ベルリンでは、1978年より、旧西独政府の実験として、大規模で質の高いSTサービスが実施されているが、その現況を調査した。
往訪先については、図1-1、図1-2、表1-1を参照のこと。
4. 国内で調査した都市
フランスおよびドイツの諸都市における事例との比較対象として、国内では金沢、横浜、熊本の3都市を調査対象に選定した。
金沢と横浜は、1998年に運輸省の「高齢者・障害者等のためのモデル交通計画」におけるモデル都市に選定され、ノンステップバスの導入やSTサービスについても積極的に取り組んでいる。熊本は、国内で初めて低床路面電車を導入するなど、それぞれ国内の先進事例として注目を集めている。
往訪先については、表1-2を参照のこと。