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これらの情報は、調査船観測、漁船や市場情報はもちろんのこと人工衛星から得られる水温やクロロフィルデータなどから収集する。ほぼ毎月行う当水産研究所の調査船「みずほ丸」による観測は、水温、塩分、生物採取を基本項目として実施しているが、海流観測、カニ籠やスルメイカ漁の操業試験も行っている。特に重要なスルメイカ漁では、1時間あたり何匹獲れるかと言う単位努力量当たりの漁獲尾数を算出し、これでスルメイカ資源の密度を評価している。また、夏場にウラジオストクの研究所との共同研究で、スルメイカの資源調査と海洋観測を行っている。その他、プランクトンネットを使って航走採集や垂直採集を行い、係留系による沈降物採取観測も実施している。こうして得られた海洋観測網の情報は、海洋機関や漁業団体に提供するとともに、貴重な研究データとして活用している。

 

○エピローグにかえて

年頭に島根県沖でロシアタンカーの重油流出事故が起きた。海上保安庁や地元関係者、多くのボランティアの方々の努力で少なくとも沿岸部には美しい海が戻ってきたようだ。私たちも所をあげて水産生物や餌生物への影響調査を実施してきた。生物への影響は長期間に亘るため、また隠岐諸島北東の深海には未だ大量の重油をかかえた船体が眠っているため、今年の調査結果を踏まえて今後の調査研究計画や監視体制を検討する時期にきた。緑と水が織りなす美しい港の散策を楽しみにする者にとって,釣った魚が捨てられている光景は残念である。重油流出事故で身をもって体験したように、海は一度汚れると回復に時間がかかり、そのつけは海からの幸を利用する我々に戻る。「釣った魚はおいしく食べ、食べない魚は海に戻す」ことこそ、海を美しく保ち、海の幸を有効に利用していく近道であることをもう一度考える必要がある。

 

 

 

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