○海況とは、漁況とは
水産資源を食料として安定的に利用するために、海で何が起きているのか、海の変化は魚介類をとりまく生態系にどのような影響を及し、どのようなメカニズムで資源の変動が起きるのか、また変動を予測する手法開発などの研究が必要となる。このような研究の基礎として、私たちは日本海における海況と漁況をモニターしている。
「海が暖かい、東の潮が強い、時化が多い、海の色が悪い」など、海の状況を海況と呼ぶ。漁業にっては海況を迅速に知りたいとうニーズから、代表的な海況情報として水温分布図を利用している。当研究所では、道府県水産試験場、海上保安庁、気象庁など海洋関係機関とのデータ交換を行い、月に1回「日本海漁場海況速報」を発行している。水温分布図の中で我々が注目しているのは、100m、200m層の渦の動きで、規則性のあるものとないものがあり、渦の動きを海況の予測に用いている。
大和堆の南西付近にできる渦は、あまり移動しないのに対して、隠岐諸島から能登半島、秋田沖にかけてみられる渦は北東へ移動しやすい。暖水の渦と渦の間にある冷水域が接岸するか否かが沿岸の定置網の漁模様を左右することは、良く知られている。
一方、漁況とは、「今年は、小さなサバがよくとれる、イワシはさっぱり、カツオがとれた、スルメイカは去年より早く北へ行った、クラゲが多く網のめずまりで困る」などの漁模様に関する情報である。なかでも最も重要な情報は、どの海城でどんな魚が獲れているかを示す漁場分布図と漁獲量変動である。水産庁の外郭機関である漁業情報サービスセンターでは、5〜10日ごとに「漁海況速報」を刊行しており、これを見るとどこで何が獲れているか漁業の特徴がよく分かる。沿岸域では、サバ・イワシ・アジなどがまき網で獲れ、沖合では釣りによるスルメイカの漁獲が主要である。さらに日本海の沿岸漁業で重要なのは定置網漁であり、魚の回遊経路を探る上でも定置網の漁模様は重要な情報である。