この三つのグループの分布を図4に示すが、第一のグループが32゜N以南に、第二のグループが33°N以北の沿岸域に、そうして第二グループがちょうどその中間域に現れていることが分かる。図5で第二グループの頻度が直線的に減少することは、塩分値そのものの分布を考えた場合、それが正規分布(ガウス分布)からかなり外れた形をしており、フラットなピークを示すことを意味する。この海域は黒潮の流路が直進時には亜熱帯水に、蛇行時には沿岸水に占められる場所であり、このことがこのような特異な分布形状を示す理由であろう。
面白いのは、図5の曲線全部が全体として見れば34.90に向かって減少していくのであるが、34.90のところで例外なく折れ曲がりを示し、その先では、値は小さいが、余り減少することなく35.00付近まで伸びていくように見える。このことは、通常の塩分変動によっても34.90程度までの塩分値は生じ得るが、34.95以上の値は何か特別なイベントの形でこの海域にもたらされた「異常水」と解釈できることを示唆している(詳しくはMorikawa et al., J.Oceanogf., vol.53, 633-643, 1998を参照されたし)。この様な実在はするが、「異常値」と考えられるデータを気候値としての平均値やその分散値を求める解析に含めるべきであるかどうか、議論の余地がある。ここに示したものはその一例であるが、「異常値」を統計的にどのように扱っていくべきか、今後検討を重ねるべき問題であると考える。
4.新しいデータの出現による研究動向の変化の例
以上で述べてきたことは、最近の海洋学の発展に伴って、新しく生じつつある海洋データ管理上の問題点について、データ管理の側から見てきたものであるが、ここでは見方を変えて、新しいで海洋データ・情報の出現が、どのように海洋学の発展に影響したかを、二つばかり例を上げて論じておきたい。