表1に見られるように、和歌山県水産試験場が異常高塩分水を発見した同じ日に、水産庁の蒼洋丸も近接海域で同様の水を観測している。2隻の観測船が独立して同時に異常高塩分水を観測していることは、観測誤差のようなものでなく、そのような水が実在していたことを明確に示唆するものであるが、この解析が行われるまで水産試験場の研究者がこのことに気付かなかったという事実(水産試験場の資料がJODCにファイルされていないという事実も知られてなかった)が問題である。このことは、従来から海洋データの管理において「データ収集」という側面が強調され過ぎており、ユーザー(特にデータ提供者)へのサービスが十分ではなかったことを示すと考えられる。データ提供者が、理念ないしは義務感のみからデータを送ってくるというのは決して健全なこととは言えない。これでは高品質のデータを収集することは難しかろう。このような機関は、最大のデータセットやデータ・プロダクツのユーザーとなり得る訳であって、MIRCはこの面でも有効なインターファイスとなり得ると考える次第である。
我々は解析海域を図4に示すように1度メッシュのドメインに分けて、各々のドメインにおける高塩分水の出現の様子を調べた。先ずすべての観測点において、塩分の鉛直プロファイルに現れる最大の塩分値を求めた。そうして、いくつかの塩分値(34.70から35.00まで、0.05間隔)を設定し、その値より大きな塩分値の出る割合をドメイン毎に求めた。その結果を図5に示す。この割合は設定した塩分値が大きくなるほど当然減少していくが、問題はその減少の仕方である。図で便宜上、三つのグループに分けたが、第一のグループ(実線)は34.70で80%以上の値を示すが、34.80付近から急速に減少し、34.90付近でかなり小さな値に落ちるもの、第二のグループ(点線)は34.70での値が60.70%程度であるが、そこからやはり34.90付近の小さな値に向かって直線状に減少していくもの、第三のグループ(破線)は34.70以上の出現確率が50%以下であり、そこから指数関数的に減少していく。