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2. 海氷情報への応用

今年度の研究では海氷情報を得るために、後方散乱係数を輝度値として画像化されたERS-1画像やRADARSAT画像から自動分類を試みている。しかし、海面が荒れて反射振幅が大きい場合など、反射信号の振幅情報からだけでは、流氷と海面の分類が難しいようである。

一つの提案はポラリメトリックSARの利用である。まだ航空機搭載SARでしかデータが取得されていないため海氷への応用研究はあまり報告がない。しかし、ポラリメトリックSARは物質の種類だけでなく形状の情報も得られるため、海面と海氷の分類は可能と考えられる。

2つめの提案はアロングトラックInSARの応用である。これも現在は航空機搭載SARでしか実現されていない。しかし、スペースシャトルで実験を行うように、数十mのアームの先に2つめのアンテナをつけることで衛星搭載アロングトラックInSARも実現可能である。この方法では数m〜数十m秒はなれた時刻で同一ターゲットの画像を取得する。その時間内の変動が位相画像として表示される。海面は大きく動揺、変化しているのに対し、海氷部分は短時間ではほとんど変化していないので容易に識別が行える。ただ、陸地も海氷と同じように変化していないため、最終的には従来のSAR画像との重ね合わせ処理を行い、識別する必要があると考えられる。

 

3. 海流情報への応用

今年度の研究で海流の解析を行ったが、SAR画像の輝度値だけから流速等を推定するのは簡単ではない。将来はアロングトラックInSARを用いることにより、海面の流速を直接的に計測ができるようになる。アロングトラックInSARはアンテナからターゲット方向のスラントレンジの速度成分のみ計測するので、正確な海流速度を求めるためには図8のように異なる2方向から観測する必要がある。

アロングトラックSARは現在のところ航空機搭載SARでしか実現されていない。そのため画像化できる範囲が数キロからせいぜい十数キロで海流観測には不十分である。将来、スペースシャトルのようなアームを備えた衛星SARでアロングトラックInSARが実現されれば海流観測に画期的な進歩をもたらすと考えられる。

 

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図8 InSARにおける速度計測

 

 

 

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