4. 波浪解析への応用
波高を観測する手法として、今年度の研究で行ったように後方散乱係数のデーターベースを整備することは重要であると考える。さらに波高観測に、シングルパスのアクロストラックInSARを適用すると、ある瞬間のレンジ方向波浪の断面形状を画像化することができる。高さ方向の分解能は2つのアンテナ間距離とSARの波長、システムのS/N等で決定され、航空機搭載SARでは1m程度が実現されている。ERS-1のようにLバンドを使用した場合5m程度が限界と考えられる。従ってスペースシャトルのようにアクロストラック方向のアンテナを設置するアームを有し、より周波数の高い衛星搭載InSARが実現されれば、波高を正確に計測することが可能になる。
風浪観測にもInSARは有効である。航空機搭載のアロングトラックInSARで強風下の海面を観測すると、風により飛ばされている海水の速度成分を計測することができる。これから海面上の風速を推定することができる。
これらのInSARデータに従来のSAR画像を重ね合わせることにより情報量が増加し、解析の精度が飛躍的に向上すると期待される。
5. まとめ
InSARやポラリメトリックSARの研究は十年以上前から行われてきた。しかし、そのようなSARデータを取得できるシステムがなかなか実現されなかったため、実際の観測データによる応用研究はまだあまり進んでいないのが現状である。
最近、航空機搭載SARでポラリメトリックとインターフェロメトリックSARが実現され、データを使用して研究ができるようになってきた。その結果、従来のSARでは不可能であった高さや変動量、速度、物質の状態等の情報が得られるようになり、SARの適用範囲が格段に広がりつつある。
2002年夏にALOSが打ち上げられ、ポラリメトリックSARのデーターが容易に入手できるようになる。さらにそれらを補完する航空機搭載InSARのデータを合わせて用いることにより、海洋情報の解析技術は飛躍的に進歩すると考える。
そのためにも、SARの海洋情報解析技術の研究は今後も重要と考える。