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SARの場合は空間解像度が高いことから2次元スペクトルの計算領域を小さく取ることができるため、画像を小領域に分割してそれぞれの2次元スペクトルを求めることで波向や波高の水平分布を求めることができる。沿岸域の波浪情報は防災、運輸、水産、レジャーなどの面で重要であるが、沿岸域全体をカバーする十分な数の波浪観測点は整備されていない。SARによる波浪観測が実用化されれば現在より詳細で局所的な波浪データベースの構築が可能となり、港湾・海岸工事などに重要な波浪統計値の精度が上がる他、波浪予報の精度も向上すると思われる。

沿岸の波浪は比較的短い波長まで対象とする必要があるため高い空間解像度(数m程度)が必要である。観測頻度は予報に利用する場合は高い頻度(1回/日以上)が必要と思われる。

SAR以外ではマイクロ波高度計による波高観測がある。空間解像度は数km程度である。

 

3.2.4 油汚染

SAR画像を用いて海洋に流出した油の検出を試みた例は日本海で沈没したナホトカ号のケースに見られ、オイルスリックがSAR画像上では暗い縞模様として観察された。今後、海洋への油流出事故が発生し、天候が悪く可視・赤外センサが使用できない場合などに有効と考えられている。

油汚染に対応するためには十分高い空間解像度(10m以下)が求められるが、緊急にしかも高頻度に撮影する必要があるため衛星より航空機SARが有効と思われる。

 

3.2.5 内部波

SAR画像上で表面波に比べて波長の非常に長い縞状のパターンが見られることがある。海底地形による変形の様子などから内部波と考えられるケースがある。内部波による収束発散が表面のさざ波に影響を与えてSAR画像上に現れると言われている。

内部波は沿岸の海況に影響を与えるため、SARによって観測されれば潮目などとともに水産分野で有用な情報を与える。

内部波は波長が長いため現在程度の解像度で十分と思われる。

 

3.2.6 船舶航行密度

船舶はSAR画像上で高い輝度に観測され容易に判読可能である。モニタリングの性格から雲があっても定期的に観測が可能である点が重要である。内湾や海況など比較的狭い範囲の船舶の航行状態をモニタリングするためには高い解像度が必要となる。船舶を海面から区別するためには海面からの散乱は小さい方が良く、入射角を大きくとった方が有利と考えられる。

 

3.2.7 実用化への課題

(1)現地観測の必要性

SEASAT/SAR以来、SARによる海洋観測は数多く行われてきたが、実用化された分野は少ない。これはSAR画像に示されたパターンから目的の海洋情報のみを抽出する技術が確立しないためと思われる。流氷に関しては対象が海面に浮いている個体であり、それ自体がマイクロ波の散乱体であることから比較的レーダ観測になじみやすく、得られた画像の理解も容易であった。

 

 

 

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