(3)氷厚
氷厚についてはサロマ湖を例に後方散乱係数と氷厚の間に負の相関が見られるとの報告があるが、外洋の流氷については形状や積雪の有無などで後方散乱が変化するため氷厚との関係を評価することが困難である。ポーラリメトリによる氷種の解析から氷厚が推定できる可能性もある。
3.2.2 海流観測
海流観測ではSAR画像上のパターンと海流の関係を示唆する研究例は多いが、実際に海流観測との定量的な比較を行った例は少ない。SAR画像上には海流に関係があると思われる筋上のパターンが見られることがあるが、実際の海況との関連は研究課題である。
(1)海流
SARによる海流観測の可能性としては強流域の境界を画像から判読することが挙げられる。
判読の容易さや定量化については熱赤外バンドによる水温分布観測の方が有効であるが、雲により観測できない場合の手段としてSARが利用できれば価値が高い。また、流向・流速を定量的、2次元的に把握できれば、他のセンサでは得られない情報であるため有用である。
海流は時間的・空間的変化が大きいため現状程度の空間解像度で十分と思われるが、観測幅は100km程度では黒潮流軸等は部分的にしか捉えられない。
SAR以外では、マイクロ波高度計により海面高度から地衡流速が計算される(TOPEX/Poseidon衛星が運用されている)。高度計データからは無流面の仮定が必要ではあるが物理的に根拠のあるモデルによって流速が算出される。空間解像度は数kmである。
(2)潮流・潮目
沿岸の流況、特に潮目の分布や強度などは水産業にとって貴重なデータとなる可能性が高い。これまでの研究例では潮流と海底地形によってSAR画像上のパターンを説明しようとしたものなどがあるが、定量的な観測はこれからの課題である。
また、沿岸域の潮流などは時間的・空間的な変化が大きく、高い解像度(10m以下)と高い観測頻度が求められる。現地観測としては船舶による表層流速の分布を把握しSAR画像との比較を行うとともに、潮目付近の波浪・浮遊物・海面の状態についての観測からSAR画像に現れるパターンがどの様な海洋現象と関連しているかを検討することが必要である。
3.2.3 波浪観測
ERS-1が波モードを搭載しており波浪の2次元スペクトルを観測できる。SAR画像にはうねりと思われる筋状のパターンが見られることがあり、その画像から2次元FFTにより波向と波長(計算で周期も)が求められている。