FFT画像は256×256ピクセルで出力されるが、以下の解析結果ではパワーの高い、低周波成分に注目するため中心部の50×50ピクセルを取り出して表示した。
2] 解析結果
図50〜図56に解析結果を示した。各図において上段は原画像とそのFFT画像、下段はメディアンフィルターをかけた画像とそのFFT画像であり、SAR画像は256×256ピクセル、FFT画像は50×50ピクセルである。
いずれの日のFFT画像もはっきりとしたピークは現れなかった。画像によっては低周波成分にやや方向性が見られた。
'95年9月15日(図50)では波向NNWに対して、NW-SE方向にやや強いスペクトルが見られた。
'96年2月2日(図52)では波向Nに対して、NE-SW方向に弱いピークが見られた。
'97年7月12日(図53)では波向WSWに対して、WNW-ESE方向にやや強いスペクトルが見られた。
'97年10月25日(図55)では波向Wに対して、WSW-ENE方向に弱いピータが見られた。
'97年11月29日(図56)では波向SWに対して、W-E方向に弱いピークが見られた。
その他のデータからは特に方向性を読み取ることはできなかった。
原画像に明瞭なパターンが見られる場合には図48に見られるようなピークが得られるはずであるが、本調査で対象とした画像にはこのようなパターンが見られなかったことから2次元FFT解析が有効に機能しなかったものと考えられる。
画像にパターンが明瞭に現れなかった原因としては、
・ 存在した波浪の波長が短くERS-1/SARの解像度(=30m)では十分検出できなかった。
・ 対象とした波浪の波形勾配に対して風波が相対的に大きくうねり性のパターンを覆い隠した。
・ 画像の合成開口時間が波浪の同期に対して長いために波浪のパターンが不明瞭となった。
などが考えられる。この内、合成開口時間による影響について以下の通り評価を行った。
SARではレンジ方向(衛星軌道に垂直な方向)の分解能を上げるためパルス圧縮技術を用いている。これは発信するパルスの周波数を時間とともに変化させ、受信した散乱波のシグナルを周波数成分毎に時間をずらせて合成すると、パルス圧縮を行わない場合に比べてシャープなシグナルを生成することができる。
アジマス方向(衛星の軌道に平行な方向)については受信パルスにドップラーシフト(衛星に近づく場合は正、遠ざかる場合は負)が生じる。異なる位置から発信されたパルスの受信シグナルをこのシフト量に応じて重ね合わせることによりシャープなパルスを生成することができ、アジマス方向の分解能が向上する。ドップラーシフトを用いることから1点のデータを合成するためには軌道方向の一定範囲で発信・受信されたパルスを用いる必要がある。この範囲を合成開口幅、合成開口幅を衛星が飛行する時間を合成開口時間という。図49に合成開口幅の概念を示した。