(3)同時生起行列によるテクスチャ解析
SAR画像は単チャンネルの画像であるため、一般に画像分類に用いられているチャンネル間の組み合わせによる方法や各チャンネルの輝度値から指標量を算出する方法は適用できない。SAR画像の分類手法としては、
・複数の時期の画像を用い、それぞれの時期の輝度値によりマルチチャンネルの場合と同様な解析を行う方法。
・画像のパターンを抽出して分類する方法(テクスチャ解析)。
平成9年度に試みた手法は、画像を小領域に分割しその中での統計量によって分類するという意味で、テクスチャ解析の一種と考えることができる。
ここでは、テクスチャ解析の手法として同時生起行列による特徴量の抽出を試みた。
1] 解析手法
同時生起行列は方向別に画像の輝度値が変化する頻度を求めた行列である。
あるピクセルに注目すると隣り合ったピクセルへの方向は全部で8方向である。このときある方向について、注目するピクセルの輝度値を行、となりのピクセルの輝度値を列とする行列を作り、画像内にあるそれらの組み合わせの出現頻度を要素として入力する。これを同時生起行列という。角度0°(右方向)の同時生起行列の模式図を図30に示した。
図の左側に示したのが4階調の部分画像であり、右方向に輝度値が0から1へ変化しているピクセルが2ピクセルあるため、同時生起行列の要素を(始点の輝度、終点の輝度)で表すと(0,1)=2となる。
また、0°と270°(左向き)とを同時にカウントすると(1,0)=2となる。対角線の要素は片側向きの2倍となる。
このような同時生起行列が8方向について考えられるが、反対方向を同時に考えるので、実際に算出するのは4方向(0,45,90,135)となる。
この同時生起行列出現数の総数で正規化して出現確率行列としたものをで表し、画像の輝度レベルの数をN、P(i,j)x方向(横方向)、y方向(縦方向)平均をμx, μy、標準偏差をσx, σyとした時、次のような特徴量を計算する。実際の解析ではこれらの特徴量を方向で平均して全方向的な特徴を見たり、各特微量の方向別の違いや特徴量同士の関係を見ることで基になった画像のテクスチャを把握することになる。