4 オーストラリア防衛協会(12月5日)
(1)訪問先機関の紹介
最終日はメルボルンのオーストラリア防衛協会(ADA)のマイケル・オコーナー(Michael O'Connor)氏を訪問した。オーコナー氏以下の参加者は、戦略アナリスト、学者出身の安全保障問題専門家、元中国の専門家、法律家、雑誌編集者の五人であった。
オーストラリア防衛協会は独自の防衛専門誌「DEFENDER」の発刊をつうじてオーストラリアの安全保障問題を分析し、国防政策に積極的に政策提言を行うシンクタンクである。5
(2)各訪問先機関での討論・意見交換の概要
個別の各論では、まず最初は北朝鮮がどうなるかという話、中国がどうなるかという話が先方から出てきて、それについてわれわれが答えるという形で会議が進行した。
われわれが進めている日米韓の防衛協力体制についての話を非常に興味深く聴いたうえで、「これは面白い」と反応を示し、今後オーストラリアがこうした日韓協力関係に「どう参加していくことができるかを是非考えたい」との肯定的な意見が多く出た。
さらに、南半球と北半球で、日豪が、それぞれの地域の協力体制をまとめる計画を進める構想については大賛成してくれた。将来も「シーレーンを守る」というお互いの国益に基づいての協力はぜひ続けるべきであるという意見が出た。
中国に関する見方の議論のなかで、とくに「TMDについての中国の反論にどう対応するか」、また「中国の言い分についてのオーストラリアの見方」について説明があった。
「TMDを中国との戦略交渉の梃子につかい、アジア太平洋地域における軍縮を推進する」という発想に豪州側は興味を示した。(川村純彦氏のTMDに関する論文を後日送付すると約束した)この点は今度お互いに意見を交換する、あるいはディスカッションを続ける上で重要なポイントとして残った。
その他、中国専門家の中国の食糧流通システムの崩壊状態とそこから予想される今後の中国の食糧および農業問題を懸念する声もオーストラリア側から強く表明された。オーストラリア側の安全保障問題を見るバランスのとれた視野の広さを垣間見たとの印象を持った。
ただし、中国の今後の経済発展能力を過大評価し、現在中国が抱える問題について過小評価するきらいがあった。中国の軍事力の拡張についても、例外的な予算の優先配分がなされている点などにつき、豪州側は見過ごしているように思われた。
5 政策提言機能を有する点で、日本の防衛関係の親陸団体とはことなっている。名称で内容を判断してはならない。
(3)所感(提言含む)
今回訪問した機関の中で、このオーストラリア防衛協会の考え方が、最も柔軟かつ現実的であった。将来のオーストラリアのセカンド・トラックの対話相手としては最適であるように思われる。オーストラリア防衛協会は、ネットワーク型のシンクタンクであり、テーマに応じて各専門分野で活躍する人材が、オコーナー氏の下に集結し、充実したアウトプットを出している。オコーナー氏を初め、元は政府関係者が多数参加している。今回の会合は視察団に日豪対話への明るい希望を与えた。オコーナー氏を初めとするオーストラリア防衛協会一行は、平成11年4月に意見交換のため、日本を訪問し、国際経済政策調査会、岡崎研究所と会合をもつことが決定した。