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3 外務・貿易省戦略・情報政策局(12月4日)

 

(1)訪問先機関の紹介

 

3日目の訪問先は外務・貿易省であった。視察団との会合を積極的にアレンジしたのは、同省諜報・対抗テロ政策局のビル・ワイズ(Bill Wise)氏を中心とする外務・貿易省の官僚であった。出席した8人のスタッフは外務・貿易省、国防省の役人であり、うち6人は北東アジアの専門家であった。

 

(2)討論・意見交換概要

 

視察団側から、96年4月の日米共同宣言およびガイドライン見直しの約束をした橋本・クリントン会議の成果についてオーストラリアが真っ先に賛同の意を表してくれたことに対して感謝の意を述べたところ、先方から「それは当然のことである」とのコメントがあった。ワイズ氏は「日本と本音ではなせる本格的な対話としては、今回がまさに一年ぶりである」と言ってくれた3。討論は本音ベースで行うことができた。日本側からいろいろな意見をぶつけ、それに対する向こうの反応を聞くという形式で行なわれた。

 

シーレーンに対しては、お互いの国益のために、それぞれ南半球と北半球に位置していて距離は離れているものの、シーレーンの安全の確保という共通の目的のために役割を分配しながら必要な体制を確立していくとの川村団長の考え方に、豪州側は両手をあげての賛意を示した。さらに、シーレーン安全確保のためアメリカを中心に据えつつ二国間安保体制を寄せ集めたクモの巣状の体制による、いわゆる「バーチャル・アライアンス」の構想に、オーストラリアは強い関心を寄せた。真剣に考えてみたいという確かな手応えを視察団は感じた。

 

中国に対する見方は、実務者の意見は、オーストラリア国立大学の教授方に比べ、むしろ日本からの派遣チームに近かった。しかし、視察団側が提示した「TMDを中国との戦略交渉のてことして使用し、アジア太平洋地域での軍縮を推進する」との斬新な考え方に、豪州側はおおきな驚きを示した。

 

今回の討論では、中国の見方について、あるいは朝鮮半島の統一に至る過程についての討論に前半の大半を費やした。朝鮮半島の統一は、一年ほど前までに考えていたほど容易にかつすぐ到来するものではないとの認識で一致した。とくに韓国との関係では、訪問団の訪豪に先立つ金大中大統領の訪日が大歓迎された反面、江沢民主席の訪日では日本国民の対応が中国に対しては冷淡であったことが報告された。すなわち、日本国民は、韓国に好意的であり、金大中大統領の訪日は大成功。江沢民主席の訪日は大失敗に終わったとの、日本チームの評価を伝えた。中国は豪州で「江沢民主席訪日は大成功」と喧伝しているが、そのような事実は、日本ではまったく認められず、今回の訪日で中国が外交的成果をあげることがまったくできなかったという点を、視察団は事実に即して詳しく説明した。

 

3ちょぅど1年前に小川団員がビル・ワイズ氏を訪問した。

 

 

 

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