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2 オーストラリア国立大学

太平洋・アジア研究所北東アジア研究プログラム(12月3日)

 

(1)訪問先機関の紹介

 

2日目の訪問先はオーストラリアの首都キャンベラのオーストラリア国立大学北東アジア研究プログラムであった。当プログラムは、オーストラリアと密接な貿易関係を持ち、同国家の国益にとって重要な地域である北東アジアの安全保障および経済情勢の包括的な研究を目的としている。主任は元オーストラリア外務・貿易省長官(日本の外務事務次官に相当)出身の学者、スチュアート・ハリス(Stuart Harris)教授である。当プログラムには、ハリス教授の他、ハリス教授の生弟子でジャーナリストおよびオーストラリア国防相顧問出身のグレッグ・オースティン(Greg Austin)博士、経済学者のヘザー・スミス(Heather Smith)博士などがいる。

今回視察団との会議に参加したのはハリス教授とオースティン博士の二人であった。また、この二人はちょうど数週間にわたる日中関係セミナープログラムを終えたばかりで、同セミナープログラムを元に今後出版する共著の調整が本格化する前に、日本の対中認識を日本の研究者から直接聞きたいと考えていた。

 

(2)各訪問先機関での討論・意見交換の概要

 

● ブリーフィング

 

ウーロンゴンの海洋政策研究所とは異なり、視案団と当研究プログラムとは初対面であったため、小川彰団員より、国際経済政策調査会が主催する「公海の自由航行に関する普及啓蒙」事業、協力団体である岡崎研究所の活動について説明がなされた。その後、当初の予定どおり川村団長が最近の日米安全保障関係の推移、日本の国内政治の変動、川村団長自身の国際的海洋政策に対する見解を説明した。とくに海洋政策については、CSCAP通じたマルチ型の地域協力と日米のバイ型を並行させる「デュアル・トラック」の必要性が強調された。その後、小川団員から、民間シンクタンク同士による日韓のセカンド・トラックによる海洋協力の対話、および日米韓トライ型海洋協力の対話の進展についての事例報告が付加された。オーストラリア側は、非常に熱心に質問し、日韓関係の安全保障面での緊密化に強い関心を示した。

 

● 意見交換・討論

 

日米のバイ型を並行させるべきであるとの日本側の主張に対して、ハリス教授から反論があった。オーストラリアが中国寄り、日本が台湾寄りでは両国の海洋協力はままならないのではないか、との趣旨であった。そして、中国は海軍協力を一貫して拒絶していることを強調し、中国にとっては台湾問題が外国が敵か味方を知る指標であるという指摘があった。

 

これに対し、オースティン博士は、包括的な中国に関する見解を示した。博士は近著「中国の海洋フロンティア」をもとに、南シナ海および東シナ海における領土紛争の原因が中国の石油・エネルギー問題にあるという点を強調し、中国が「武力行使よりも外交を安全保障の第一手段としている」という点を指摘した。

 

 

 

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