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過去において、東アジアのシーレーン防衛に及ぼす主要な脅威は、明らかにソビエト連邦によるものであった。しかしながら冷戦の終了とソビエト連邦の終わりと共にシーレーン防衛に対するそのような脅威は実質的に減少した。しかし商業海運の安全が問題を持ち続けていても驚きではない。1つには広範囲な低レベルの脅威の潜在性がある。それはテロや海賊行為、麻薬貿易、難民流失などを含む。明らかにそのような脅威は本質的に犯罪行為である事がしばしばで、普通、国同士の破壊的対決になる事はない。しかしながら更に重要な事は、冷戦安定の崩壊からくる広範囲の戦略的不確実性である。それは更に長期間における東アジアのシーレーン防衛に対する深刻な脅威を示すかもしれない。この発展と海事的影響は慎重な調査を要求するものである。実際、東アジアにおけるシーレーン防衛は確かに継続的注意に値する課題である。

 

1 海洋の領域を巡る論争

 

領域に対する論争は、過去2、3世紀における諸国間の戦争の最も重要な唯一の原因であったと指摘されている。ある学者が述べたように国境線にはある種の神聖さがある。本質的価値や経済そして戦略に比例する以上に領域の心理的重要性があるとしばしば述べられる。従って領域論争は必ずシーレーン防衛を含む国際的平和防衛に対し深刻な脅威を持つ。対決の危険で重要な天然資源が問題になっている時、それだけより明白になる。

この意味において東アジアにおける現在ある海事領域論争は、もし慎重に扱われないなら、随時この地域においてシーレーン防衛に対し主要な脅威になるかもしれない。現実的に言うとシーレーン防衛に対する妨害は特にMID-SEA諸島に対する海事支配権の切迫した要求に没頭している沿岸諸国間に、予期せぬ武力衝突を起こすかもしれない。

最近、東アジアの海では、7つの大きな領域論争がある。それらは、その地域におけるシーレーン防衛に対する脅威となり得る。1996年10月の「ファー・イースタン・エコノミック・レヴュー」によって行われた最近の世論調査によると、多くのアジアの人々は、その地域の次の戦争は、領域論争と天然資源におけるものであろうと考えている。領域や天然資源における軍の対決は必ず機雷の脅威や使用、つまりは東アジアのシーレーンに対する深刻な脅威を持つ。

 

2 沿岸国の要因-航海の障害と拡大する海洋主権

 

アジアにおける限られた歴史的経験を基礎として、沿岸国の要因は、この地域のシーレーン防衛に対するもう一つの大きな脅威となるかも知れない。特に国際海峡を通過する海運に対する潜在的な脅威は、次の事から起きるかもしれない。

(1)その国の安全の為に航行の自由を制限する沿岸諸国の試み

 

 

 

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