基礎論文抄訳1
公海の自由航行に関する普及啓蒙事業
オーストラリアにおける海洋安全保障分野の重要英語論文抄訳
海運の安全:グローバルな観点から
エリック・グロヴ(Eric Grove)
解説・翻訳:阿久津博康
著者紹介:
1997年から98年までウーロンゴン大学海洋政策センターで研究員を務めた、英国を中心に活躍する海洋、軍事的安全保障の専門家である。主な著書に、「シーパワーの将来」(The Future of Sea Power, Routledge, London, 1990)、「海洋戦略とヨーロッパの安全保障」(Maritime Strategy and European security, Brassey's London and Washington, 1990)などがある。
抄訳本文
海運は依然として世界経済の死活にかかわっている。国際経済の大半が国際金融で占められるようになった現在でも、国際貿易はなおも重要である。輸出入額は各国によって異なるが、英国、日本、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ナイジェリア、スエーデン、ヴェネゼーラ、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、エジプト、フランス、ドイツ、イラン、イタリア、サウジアラビア、南アフリカ、シンガポール、台湾、韓国は国際貿易依存度のとくに高い国々である。米国のようにこれらの国々よりは貿易依存度の低い国であっても、重要な物資を健全な価格で輸入する上で、海運に相当の利益を持っている。スタンレー・ウイークスの言葉を借りれば、「米国が北東アジア地域のSLOCに持っている経済的関心は明らかに増大しており、米国の貿易相手国が妨害を被った場合のことを考えるとなおさらである。」
海洋は燃料、一次産品、最終生産物を輸送する上で最も効率的な手段である。地球の面積の3分の2を海が占めているという事実からすれば、「地球」とは誤った名前であると言えよう。いずれにしても、大半の国が港へのアクセスを持っていることは事実である。実際、海上輸送が歴史の中で支配的な輸送手段であったということは、世界人口もまた海の近くで生活してきたということを物語っている。