公海の自由航行に関する普及啓蒙事業
オーストラリアにおける海洋安全保障分野の重要英語論文抄訳
解説・翻訳:阿久津博康
はじめに:訳者による解説および文献解題
今回紹介する2点の抄訳論文は、日本財団助成「公海の自由航行に関する普及啓蒙事業」研究委員会(川村純彦委員長)の選択による、海洋安全保障(とくに公海の自由航行)の基礎的理解を得る上で有益かつ重要な英語論文集Shipping and Regional Security所収の英語論文の簡易訳である。
編者はサム・ベートマン(Sam Bateman)およびスティーヴン・ベイツ(Stephen Bates)である。サム・ベートマンは元オーストラリア海軍(RAN: Royal Australian Navy)准将で、現在オーストラリアでウーロンゴン大学海洋政策センター所長を務め、同時にアジア太平洋安全保障協力会議(CSCAP: Council for Security Cooperation in the Asia-Pacific)海洋協力作業グループの共同議長を務めている。他方、スティーブン・ベイツは、オーストラリア国立大学戦略防衛研究センターに籍を置く(1998年11月現在)海洋安全保障の若手研究者であり、CSCAP洋協力作業グループの役員でもある。
同書は、CSCAP海洋協力作業グループの第4回東京会議(1997年11月19日開催)に提出されたディスカッション・ペーパーを収録したものである。出版元はオーストラリア国立大学戦略防衛研究センター(SDSC: Strategic Defence Studies Centre)である。
同書の前書きによると、CSCAP海洋協力作業グループはオーストラリアCSCAPおよびインドネシアCSCAPの共同責任によって運営されており、上述のオーストラリアのサム・ベートマンとともにインドネシアのR.M.スナルディ(Sunardi)が議長を務めている。同グループの目的は以下のとおりである。
- アジア太平洋諸国間の海洋協力および対話を促進し、こうした諸国家が相互の偏見を持つことなく海洋環境を管理・利用する能力を増大させる。
- 地域紛争の危険を削減する安定的な海洋レジームをアジア太平洋において確立することに貢献する。
- 具体的な地域的海洋安全保障の問題について政策指向の研究を行う。