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戦略的状況は変化しやすいが、安全保障の原則は、驚くほど長持ちする。冷戦後も、オーストラリアにとって、その海岸においてより、むしろ遠方における力の均衡こそが重要な関心事項である。東アジアにおける力の均衡を維持することにおいて、同盟は、決定的に重要な役割を果たす。脅威だけでなく、不確実性に対処する上でも、同盟は価値ある保証政策である。それらは、長年にわたる重要な財産であり、戦略的関心が一致し続ける限り、明白な脅威が無くなっても衰退することはない。

オーストラリアにとって、アメリカとの同盟の主な価値は、いつも抑止力であった。同盟は、侵略国の計算を非常に複雑化する。なぜなら、アメリカがオーストラリアを助けられないなどとは、誰も仮定しないからだ。アメリカの支援こそが、フォークランド紛争におけるイギリスの勝因となったように、アメリカは、直接的脅威やオーストラリアの国力を超えた地域的脅威に対処できる軍隊を派遣するであろう。アメリカとの同盟はまた、武器と科学技術、世界で最も有能な軍隊との訓練、そして国際情報へのアクセスという形で、オーストラリアが自国の防衛力を増強するための促進要因ともなっている。

旧ソビエト連邦の崩壊と共に、ヨーロッパは安定を達成したが、東アジアでは、いまだに、巨大な力の戦略的緊張の世界的焦点である。これらの緊張は朝鮮半島、台湾海峡、南シナ海に集中している。オーストラリアは地域的緊張の場所から離れているが、更に北における力のバランスが崩れることによる連鎖反応を急速に感じている。これらは東南アジア中に伝えられ、インドと太平洋を結ぶ海峡にまたがっている。

中国と東アジアの増大する力は、先例の無い戦略的幅を見ている。これは冷戦が終結した結果である。その北部国境において、もはやロシアの力に縛られてはいないので、中国は冷戦終結の強力な受益者である。現代における先例の無い戦略的幅を持ったことと、歴史とその過程での台湾全土の領域の損失を補う衝動に火が点いた結果、中国は戦略的に東南に食指を広げている。南シナ海における広範囲な要求は、歴史解釈の混乱によるものである。それらは、アセアン諸国の戦略的安定に最大の脅威をなっている。アセアン諸国の対立は、着々と前進してくる中国に抵抗することを妨げている。

中国は、広大な領土と求心性を持ち、巨大な人口を抱えている。その周辺海域に進出することによって、中国は、たとえアメリカ政府が目をそらそうとしても、南シナ海のマラッカ海峡における公海の自由航行に対するアメリカの世界的利益を束縛している。中国はまた、海上防衛の必要なオーストラリアや日本の、全ての人々の利益をも束縛している。

 

オーストラリアとアメリカ:戦略的関心の一致

オーストラリアにとって、アメリカとの同盟は、本質的に戦略的関心の一致により東アジアにおける力のバランスの管理であり続ける。その均衡を維持することで、アメリカと日本の同盟関係は決定的に重要である。なぜならそれは、日本を防衛することであると同時に、日本の膨張を束縛することでもあるからである。

 

 

 

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