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このように、東南アジアSLOCsへの経済的な依存度は、ここを通過する国・地域別の貨物の量や価値によって、あるいはここを通過する輸出・輸入貨物の価値がその国・地域別の全体に占める比率によって示される。

これらの表から明らかなように、日本の経済は、東南アジアSLOCsへの依存度がもっとも高い。したがって、マラッカ・南シナ海の主要航路とロンボク・マカッサル海峡の代替航路の確保は、日本にとって死活的な重要性を持っている。NIEsとして位置付けられる韓国、香港と台湾の東南アジアSLOCsへの依存度は日本ほどではないが、これらの海峡の閉鎖は、かなりのダメージを与える。オーストラリアのロンボク・マカッサル海峡への依存度は、同様に非常に高い。

その一方で、アメリカの東南アジアSLOCsへの輸出・入の依存度は、3.3%と4.5%であり、これは、主として東南アジア諸国とアメリカとの間の南シナ海を通ずる貿易関係である。しかしながら、このような低い数字は、これらの航路がアメリカにとって重要ではないことを示すものではない。アメリカの繁栄は、貿易相手国の繁栄と世界経済が良好に機能するかどうかの両方にかかっている。したがって、東南アジアSLOCsの通航の遮断のアメリカへの影響は間接的であるが、その貿易相手国が受けるダメージは、アメリカへも大きな影響与える(2)

それでは、東南アジアSLOCsの通航が不可能になる場合には、どのような可能性が考えられるであろうか。現時点では、沿岸国が主権を行使して行う海峡の封鎖の可能性は低い。一つの可能性としては、南沙群島をめぐって軍事衝突が生起する場合が挙げられる。この場合、ある著書では、南シナ海の航路を避けてロンボク・マカッサル海挟とフィリッピン海を通る航路を使用すればよいので、大きな影響はないとされている。また、このルートの場合、距離が約3000キロ長くなり、往復で約10日間航海日数が伸びるが、25万トンタンカーのトン当たりの輸送費の増加は約200円に過ぎないとしている(3)

 

(2)Noer,op.,cit,,p.25

(3)田岡俊次、『戦略の条件』、悠飛社、1994年、142〜143ページ

 

 

 

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