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東南アジアSLOCsとインドネシア

防衛大学校教授

川村康之

 

目次

はじめに

1 東南アジアSLOCsの重要性

2 インドネシアの地位

3 インドネシア海軍の現況

おわりに

 

はじめに

毎年、世界の商船の船腹量のうちの半分以上が、マラッカ、スンダまたはロンボク海峡あるいは南沙・西沙群島を含む南シナ海(ここでは、これらの海峡・海域を含む海上交通路を東南アジアSLOCsという)を通過している。このような商船の航行の状況から見ても、これらの海峡あるいは「チョークポイント」の戦略的な重要性が理解できるであろう。とくに、日本は、原油輸入の85%をペルシャ湾岸に依存し、マラッカ海峡を通過する原油の半分以上が日本向けである。しかし、近年の東・東南アジアの経済的な発展に伴って、日本ばかりでなく、韓国、台湾、中国、シンガポール、タイなどにとっても、これらの海峡の重要性が増大している。

一方、インドネシアは、マラッカ海峡の沿岸国であり、スンダ海峡とロンボク海峡を領海内に置き、アジア・太平洋地域とヨーロッパ・中東地域あるいはオーストラリアを結ぶ重要航路帯の安定的な使用に直接影響を及ぼす地位にある。しかも、国連海洋法には、インドネシアやフィリピンなどが長年主張してきた群島国の規定が盛り込まれ、これらの海峡の自由な航行とインドネシアの主権の尊重との間の競合関係は、より強められた。

もしも、これらの海峡が持続的に閉鎖された場合、世界経済にとっての影響は計り知れないが、インドネシアが国際法に反してこれを実行する可能性はないといってよいであろう。それよりも、これまで順調であったインドネシアの経済発展が国際通貨危機を契機として大きな困難に直面し、スハルト体制が崩壊したように、国内の政治的混乱による中央政府の統治能力の低下の方が、海洋の安定的な使用にとって影響が大きい。

 

 

 

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