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以下はインドネシアが直面している幾つかの重要な問題と困難である。

 

<インドネシアは過渡期の重要な段階にある>

●経済の回復

悪影響後の経済を軌道に戻すことはインドネシアが優先すべき課題である。スハルトが失脚して以来、HABIBIB大統領は、経済における国民の自信を回復し、同時に、インドネシアに外国資本を投資させるために、積極的に動いている。兆しは混沌としているが、より否定的なものである。2000万人に見積もられる人々が失業し、学生の多くが学費を払えず学校を去っているときに、この不満や怒りの感覚は理解されうるだろう。更に経済は14%まで縮小している。ルピアは米ドルに対し強められたが、最悪の事態はまだ終わっていない。株式市場には良い兆しがあるが、事態を改善することは難しい。IMF規定が機能するかどうかには、異なった見方がある。

●政治的安定は大きな疑問である。

学生達はジャカルタでデモを行い、現在、人種的、宗教的、そして政治的暴力がACHEH、MAKASSAR、AMBONなど、いたるところで起きている。こうした状態で、政治的秩序は問題になり得る。しかし政権を揺さぶることにはならないだろう。もし、インドネシアが崩壊すればすぐに近隣のシンガポール、マレーシア、フィリピン、ブルネイを必ず不安定にするだろう。アセアン自体は、インドネシアからの支援がなく混乱するだろう。

●貧困の撲滅

持てる者と持たざる者の間の不公平を取り除くことは課題となるだろう。問題は、もしマレーシアで起きたような社会の完全な再編が起きなければ、資源をどの様に割り当てるかである。

●イスラム化は道徳的力以上のものであろう。

イスラム教徒が現実に忍耐力を試されるのは、政治の領域においてである。しかし、インドネシアのイスラム教徒は、アフガニスタンにおけるタリバンの道を取り、ミンダナオや南フィリピン諸島における分離主義者になる可能性はないだろう。

 

<非イスラム>

インドネシアにおける中国人の位置は多年に渡る問題である。中国人貿易商に対する最近の事件は、インドネシアが機能しなかった同化のプロセスを疑いなく証明している。インドネシアでは、中国人がインドネシアの名前に適合しインドネシアの学校に入るのが義務となっている。これは、近隣するマレーシアの政策とは対照的である。

●汚職や政治上のひきは風土的な物であり、インドネシアの癌である。インドネシアの経済が、政策の失敗から急降下した一つの原因は、官僚、政治家、国の資源管理を任された人々の汚職と政治上の引きである。

●中央から正式に脱退するか分かれる圧力は、東チモールの例のように、ジャカルタで見られる。東チモールに、より自治権を与える最近の交渉は、その他の島々に同じ要求をさせる助けとなるだろう。また、インドネシアから長い間独立を求めている地域は、より強大な自治権を要求するだろう。しかし、ジャカルタがどの地域にも独立を与えないのは明らかだ。もし、議会が決定したとしても、東チモールはほんの例外である。

●インドネシアにおける政治的変化と民主化のプロセスはスムーズではない。現在の暴力の形態は、選挙の間も続くだろう。これは、軍の引継ぎの可能性を予感させるものである。軍の反体制グループが、デモや路上暴力の影にあるという人もいる。

 

 

 

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