(注1)「日本は中国から深い影響を受けていたときでも、波高い玄界灘と広大な南シナ海があった。文明を受け取り安全も確保できるという位置にあった」。高坂正尭『海洋国家日本の構想』(中央公論社、1970年)、141ページ。
また、同書中の「イギリスは海洋国であり日本は島国であった。海は世界の各国をつなぐ公道であると同時に、国家を他の国家との接触から遮断する壁でもあった」という指摘は、「海の2つの効用」を鋭く指摘すると当時に、「海の使いかた」という意味で日本と英国が違っていたことを指摘している。
(注2)韓国中央大学教授の尹正錫博士は「戦後韓国は島国であった」と指摘している。同博士は、地政的、文化論的な視点で韓国の国防や政治のあり方を分析してきた学者である。
(注3)李氏朝鮮は、壬辰倭乱において日本の水軍をその海上交通路を断つことにより勝利した。小川晴久「朝鮮の守護神・李舜臣」『韓国史を歩く』(新人物往来社、1988)、110ページ。
(注4)この点について、藤木平八郎「躍進著しい東アジア海軍」『世界の艦船』1998年2月号(光人社)、73ページ参照。
(注5)余田計「増強すすむ韓国海軍の潜水艦隊」『世界の艦船』1994年7月号、82ページ。
(注6)韓国海軍本部が編集したセミナーの記録、『韓国の安保と海軍力』(韓国海軍本部、1993年)を参照。この中で、海軍本部作戦参謀本部長・安炳泰・海軍少将)の発言が、この時期の韓国海軍の考えを示していて興味深い。韓国海軍は1992年、竹島(独島)周辺で第1回海上討論会を開催し、第2回海上討論会は韓国の最南端に位置する馬羅島で開催された。その席で、統一への準備と、この地域の海軍力強化に対抗するために、韓国海軍の強化を唱えて、同作戦本部長は次のように指摘している。「ソ連の没落と、米国の力の限界、力の空白の発生、日本の最新鋭駆逐艦の建造による海上自衛隊の強化が進んでいる。中国は航空母艦の建造を推進しており、海軍の任務の活動領域を拡大するなど、名実共に外洋艦隊に発展しようとしている。そのために、韓国としては統一時代と海軍時代がやってくることを予想できる。この時代に国家の生存と国民の活発な海洋活動を保障し利益を守るためには、確固たる海軍力の裏付けがなければならない」(同書、5ページ)。
(注7)韓国の海事力の整備の必要性をといてきたのは韓国の国際政治学者たちである。韓国のシンクタンクとして海軍力の重要性にいちはやく着目したのは世宗研究所である。同研究所が1994年に刊行した、『21世紀におけるシーパワーと韓国』は海洋問題と韓国の安全保障についての論文集としてもっとも纏まったものである。韓国語と英語で出版された。題名は、Sea power and Korea in the 21st Centuryとくに、第8章の李春根「国家安保に対する韓国海軍の寄与」と第9章のキム・ヒョン・ギ「韓日間の海軍協力の可能性」を参照。
(注8)韓国のシンクタンクは日米韓の3国の研究者を集めて海洋における協力のありかたを研究してきた。1998年度の会議に参加した研究所は、博報堂・岡崎研究所(日本)、米海軍研究所(CNA、米国)、国防研究院(KIDA、韓国)である。その記録は、米海軍研究所より、Trilateral Naval Cooperation: Japan, US and Koreaとして1998年5月に刊行された。
(注9)『朝鮮日報』1999年2月13日付け。
(注10)金大中政権になってからの初めての国防白書は、1998年10月に刊行されたが、その中で、韓国の防衛力が依然として北朝鮮の軍事力の75パーセントにとどまっていると述べている。『韓国国防白書・1998年版』(韓国国防部)159ページ)。
(注11)岡崎研究所の「トラック2」による日米韓共同プロジェクト「統一後の朝鮮半島プロジェクト」に参加しながら、韓国の専門家からしばしば聞いたことは、韓国は金泳三政権までの時代に陸軍力と空軍力を強化するために海軍力の整備が遅れてしまったということであった。
(注12)日韓の海上における協力は進展する条件が整ってきている。日韓の海上における協力の必要性に最初に気づき促進することを提唱してきたのは元海将補の川村純彦氏である。この点に関して以下の文献を参照。
川村純彦「海上における地域協力の可能性と限界」『日本の外交政策決定要因』(橋本光平主査、PHP研究所、1999年)223〜240ページ。
Rear Admiral(JMSDF, Ret.)Sumihiko Kawamura,"The Summihiko Kawamura Papers",の以下の論文を参照。
'JMSDF Missions after the Unification of the Korean Peninsula', pp.6-14.
'Korea-Japan Maritime Cooperation for Regional Security' pp.15-24.
'Regional Cooperation on the Seas: Potential and Limit", pp.47-58.
(注13)有事においては対馬海峡(大韓海峡)を封鎖するとき、韓国は直接的な当事者となるし、日本の海上自衛隊の強化は、中国、台湾を刺激するので、中国との友好関係を発展させたい韓国としては影響を受ける。この点について、金鍾斗『日本海上防衛論』(高麗大学校亜細亜問題研究所、1995)、244ページ。
(注14)流通、貿易などの専門家の研究によると、日本海の物流が増大する可能性は大きい。日本海をとりまく北東アジアの6か国(日本、中国、韓国、北朝鮮、ロシアとモンゴル)が日本海を通じて経済交流することの重要性に着眼して様々な政策提言と交流を実施してきたのは、新潟市の環日本海経済研究所である。その経緯は、『北東アジア経済白書』(毎日新聞社、1996年)にある。
「日本海航海時代の到来こそが、今後、日本海沿岸地域の経済発展に大きな可能性を与える」(同書212ページ)。