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なぜなら、今後の韓国軍の近代化計画は、具体的には潜水艦の増強、水上艦艇の国産化の推進、イージス艦の導入などが重要な部分であるからである。韓国の指導者たちがイージス鑑の役割や海上交通路の安全の問題がより重要になってくるという認識を持っていることを考えると、やがて、装備導入の優先順位に関して海軍関係の装備の順位が上昇することは考えられる。

それにはいくつかの理由があろう。すなわち、前政権までの時期に、F16戦闘機の120機購入に見られるように空軍力の整備に予算を傾斜投入しすぎたことの反省、北朝鮮の陸軍力の脅威は減少方向にあるために、韓国陸軍のスリム化が可能になったこと、海上交通路の安全などの分野で韓国の役割の増大を望む声が韓国の内外で高まっていることなどである(注11)。

そして、金大中大統領が海軍力の整備に関心をもっているのは、その個性とも関係がある。金大中大統領は1925年に韓国の南西端の木浦市の近くの荷衣島(ハイドウ)に生まれた。南から潮風が吹きつける寒村の生家は塩田の前にあり、家からは海を見渡すことができた。金大中氏がいつも海を見ながら少年時代を過ごしたということは重要である。とくに朝鮮半島の人々は、中国大陸と日本列島に挟まれつつ、半島国家としての閉塞感を抱きつつ、常に外国への雄飛の機会を夢見る。金大中氏は朝鮮半島の最南端の塩田に囲まれた村で過ごしながら、海を発展という意味と同義にとらえるようになったのではないだろうか。

そして、98年秋の国際観艦式に参加した韓国海軍艦艇の中に書かれたスローガンは「海へ。世界へ」であった。このスローガンは、韓国人が韓国海軍の役割を考えるときに、「韓国の安全を」とか、「この地域の海洋のバランスを」ということを考えたのではなくて、韓国が世界に飛躍する手段として、あるいはその先兵として海軍力を考えていることを示唆しているといえよう。

日本でも海が南の方向に開けている地方の人々の中から、ブラジルやハワイに雄飛して、移民生活を始める人々が多数でている。高知、和歌山、沖縄である。背後に山を、そして眼前に海を見ながら、いつかは雄飛したいと考えていた金大中氏が政治家になり大統領になった。その政権が北朝鮮の陸軍力に対する抑止力のあとを考え、21世紀の国家戦略を考えるとき、まず手がけるべきと考えるのは海軍力の強化であるというのは、単なる偶然ではないだろう。

 

日韓の海洋協力へ

 

韓国にとって、北朝鮮に対する抑止が最大の目標であった時代が終わろうとしている。ここに、日本との協力関係をどのようにすればよいかという課題がでてきた。韓国にとって21世紀という時代は新しい時代であり、新しい国防のコンセプトを打ち立てるときであり、海洋を通じての国際化するという発想が現実味を帯びてきた。

これからは3つの理由から日本と韓国の海を通じた協力関係が進展することが予想されよう。

 

 

 

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