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海軍戦略を研究する韓国の民間シンクタンクの活動も活発になっている。たとえば、韓国の民間シンクタンクである海軍戦略を研究するシンクタンクは98年末に国際会議を開催した。一方、政府間の協力も急速に進んでいる。韓国海軍と日本の海上自衛隊の海難事故の救援活動に関する初めての共同訓練は99年中に行われる。このような日韓の防衛分野の交流を強化することは、98年10月の金大中大統領の訪日の際に共同宣言の中でうたわれたものであるが、99年3月の小渕総理の韓国訪問の際も金大中大統領との間で確認された。

韓国は中期的な国防計画の上でも、海軍力を重視している。韓国国防部は99年2月12日、「2000-2004国防中期計画」を確定した。2000年から2004年までの5年間の国防計画である。それによると、海軍関係では7千トン級イージス駆逐艦1隻の建造計画を含んでいる。日本が保有するイージス艦と同じ7千トン級であり、この3次事業(KDX・)は3兆ウォン(約3千億円)規模である。

その他、F15E戦闘機、パトリオット地対空ミサイルなどを建造、導入することを決定し、5年間で81兆5千億ウォンの国防予算が確保されるが、装備に関しては320項目の防衛力改善事業に、26兆7千億ウォン(約2兆7千億円)の予算を投入することを骨子としている。国防部は予算を確保するため、2002年まで軍人本給、部隊運営費を凍結し、今年から2004年までの間国防費増額率を5〜6パーセントの水準を維持したいと述べている(注9)。

 

金大中大統領の個性

 

金大中政権は1998年2月に発足した。97年秋の金融危機は、韓国の国防体制に大きな影響を与えた。韓国内で十分な国防費を確保できないのではないかという懸念がでてきたときに同政権は発足した。この政権の登場後に出来上がった先に述べた国防5か年計画は、大幅な装備近代化の内容を含んでおり、総花的であって、必ずしも海空軍力強化の方針が突出しているわけではない。依然として北朝鮮に備える必要があるという考えがあるし、海空軍力に突如傾斜してゆくだけの理由がまだ希薄であるからかもしれない。

金大中大統領は就任してから北朝鮮に対して、いわゆる太陽政策という宥和政策を打ち出し、北朝鮮との和解を重視しているが、抑止力としての軍事力を維持する方針も同時にうち出している。韓国は在韓米軍を抜きにして考えるとき、韓国軍の戦力は北朝鮮軍に対して75パーセント程度にしかすぎないという自己評価をしている(注10)。したがって、北朝鮮の陸軍を中心とした脅威に対抗するための軍事力は依然として重要であるというのが金大中政権の基本的考え方である。

ただ、金融危機のあとの韓国経済の立て直しの下で、どの程度の予算を効率的に国防費に使うことができるかという場合、5か年計画に盛られた装備近代化計画の全てを実行することは困難であろう。そうなると、総花的な国防計画の予算配分はやがて、スリム化されるであろうし、そのとき国防予算の配分において金大中政権の本音が出てくる可能性がある。そして、今後の韓国軍の近代化の中で中心的な位置を占めるのは海軍力の整備であろう。

 

 

 

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