3.3 AIS
AISは、海上移動周波数帯(国際VHF帯)での時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)によるVHF無線通信技術とGNSS(Global Navigation Satellite System:全世界的な衛星航法システム)による精密な位置の測定技術を組み合わせた船舶自動識別システムである。
AISは、当初VTS(Vessel Traffic Services)のためにという目的で開発されたが、その後、船舶間の衝突回避を主目的としたシステム(UAIS:Universal Shipborne Automatic Identification System)が提案され、そのシステムを2002年に全世界的に導入すべくIMO、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunications Union)で審議が進められている。
IMOでは、「AISの目的は船舶の効率的な航行を支援することによる航行の安全、環境保全そして船舶通航業務(VTS)の運用の改善」と、述べている。
IMOによるAISの搭載義務船舶は、西暦2002年7月1日の発効を目処に改正作業中の「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約:International Convention for the Safety of Life at Sea)第V章第20規則」によると「すべての旅客船(12人を超える旅客を運送する船舶)」と「総トン数300トン以上の貨物船(旅客船でない船舶)」となっている。また、AISとは「適切な装備をした海岸局、他の船舶及び航空機に、船舶識別符号、船型、位置、進路、船速、航行状態並びにその他の安全に関する情報を自動的に与え、同様の装備をした船舶からこうした情報を自動的に受信して、船舶を監視し、追跡し、そして海岸局と情報を交換するための自動識別システム」としている。
ITUの新勧告案 ITU-R M[8C/XA] 海上移動周波数帯での時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)を用いる汎用船舶搭載自動識別システムの技術特性では、AISは停泊中も稼動させるのが前提である。なお、港内に錨泊する船舶(造船所で艤装工事中、修理中はどうなるか不明。なお、現在の規則では全ての停泊船舶は無線局を閉局する)の位置などは6分間隔の通報から動静把握できる。(高速で航行中および変針中の船舶からの通報間隔は例えば2秒間隔などと短くなる。)
VTSにおけるAISとの連携についてはAISから提供される情報のVTSにおける効果的・効率的な利用法の検討が必要となろう。
IMOなどで検討されている関連資料を参考資料3〜5に示す。