単純な無線機は、そのホームシステムの時間スロットT+2モジュロ4で監視していることに留意すること。遭難チャンネル(FD)は、通常は、同期が取られていないものと思われる。しかし、遭難送信は、常に4フレーム(約200mS)内で聴取されるように編成されることができる。ピックアップ率とそれに続くデータ伝送率とは、デジタル選択呼出し(DSC)による場合よりは著しく良好であるものと考えられる。遭難信号がひとたび探知されると、ホームシステムの監視装置が外され、遭難船舶への直接呼出しが設定される。二重受信機を備えている固定送信局は、遭難チャンネル(FD)上の全部の時間スロットを監視することができ、1フレーム以内で遭難呼び出しを拾い上げることができるものと思われる。沿岸警備隊は、遭難チャンネルを自分達のホームシステムと考えるであろうことが予想されなくもない。そうすると、領域内で遭難している船舶に、固定送信局へ同期を取って遭難呼び出しを行わせるという、選択肢を与えることになろう。捜索救難活動も、遭難チャンネルとは区分されている業務用チャンネルを与えられることができ、この点からも、沿岸警備隊がホームシステムのチャンネルの候補にすることが考えられる。
TETRAについては、手動または自動中継モードで動作することを含めて、他の可能性も利用できる点が留意されるべきである。中継モードでは、遭難呼び出しがそのまま船舶を経由し、この機能がない場合は到達範囲外にある陸上局へ至るルートを取ることができるようにさせる。
7 二重動作
TETRAシステムにおける二重動作の通常モードは、シフトされた時間スロットを用いる周波数分割二重通信になる。このモードは、要望があれば、海上通信で、特に公衆通信とそれに準じた業務において、使用されることができると思われる。FDD呼び出しにおいては、図6が示しているように、単一の移動体が、1つの時間スロットで送信を行ないT+2モジュロ4という時間スロットで受信を行なう。このことは、二重受信機を持っていない単純な移動体は、二重通信による会話を行ないながら第5節で説明してある方法により遭難周波数を監視することはできない、ということを意味している。