●自然海岸が連続的に残されている岬町以西では、万葉に謳われた景観、伝統行事の開催、健康の視点で設定されたウォーキングルート、マリンレャーの拠点及び海辺での体験学習の場といった魅力ある資源・施設がある一方、湾奥部からのゴミの集積、海上アクセスルートの縮小に伴う周辺施設への影響などが懸念されている。
●エリア全体で見ると漁港が数多く点在し、和歌山市域では漁港の交流機能整備が進められている。
●対象エリアのほぼ中心にあたるせんなん里海公園では、海浜レジャー・スポーツ拠点など集客性のあるソフト・ハード両面の整備が進められている。
本調査では、これらの現状を踏まえ、地域の個性を生かした「なぎさ海道」実現への提案として次の三つの展開の可能性を提示しました。
●「なぎさ海道」理念の具現化の第一歩として、「なぎさ宣言」の発信及び海辺利用のしくみづくり
●「なぎさ海道」のシンボル事業として、「なぎさトレイル」の推進及びその媒体性の幅広い活用
●海辺と内陸部、海辺と海辺をつなぐ体験・学習・交流プログラムづくり及び各関係機関との連携
さらに、「なぎさトレイル」実現の可能性についての検討を重ねる過程で、「なぎさ宣言」の背景となる共通のルール・認識としての「なぎさ海道憲章」制定の必要性をとりあザました。
この基礎調査の成果が、対象地域のみならず類似条件を持つ「なぎさ海道」の各地域にって参考となる情報提供と新たな連携実現の一助となることを願っています。それは今後、人と自然が共生し合える持続可能な環境が日常生活圏に広がっていくために、「なぎさ海道」に関わる人々が認識し守るべき要件を示唆するものとなるに違いありません。そして、これらの調査を踏まえ、大阪湾ベイエリアが「なぎさ海道」の持つ共通の価値観でつながりつつ、それぞれの地域個性を生かした新たな海辺環境の創造への“ムーブメント”が生まれることを期待するものです。
最後になりましたが、調査にあたりご協力いただいた方々に厚くお礼申し上げます。
平成11年3月
なぎさ海道基礎調査委員会
(財)大阪湾ベイエリア開発推進機構
■「なぎさ海道」基礎調査'98 委員会・委員(五十音順・敬称略)
有山啓之 大阪府水産試験場 主任研究員
加藤恵正 神戸商科大学 教授
川端直志 林式会社ケイ・プランナーズ 代表
辰喜洸 前和歌山県立自然博物館 館長
辻井博 兵庫県知事公室 次席審議員
弘本由香里 大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所 客員研究員 大阪市住宅供給公社企画部住情報課 主査
増田昇 大阪府立大学 教授
安井誠人 経済企画庁総合計画局 計画官
横山晴生 建設省近畿地方建設局 企画調査宮
和田耕造 運輸省第三港湾建設局 大阪湾整備調整官 (前任 白石修章)