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過去、粘土は鉄工所などの築炉の煉瓦として大量に生産されていましたが、高炉が断熱材に転換された途端煉瓦は売れなくなり、粘土山はほとんどつぶれてしまいました。粘土山以外に転用される運命をたどったのです。自分の足元の粘土で作られた作品は非常に少なくなっています。そう考えると海底土の使い方が大事になるのではないかと思います。

 

●海底土の利用-可塑性を生かす

海底土の主成分はベントナイトです。ベントナイトの層が道路やトンネルの工事に当たると大変な難工事になると言われています。土木工事が他の入札に比べると非常に高いのはそういう不測の事態を想定しているからだと言われているほどベントナイトは始末に困ります。ところがその粘土には非常にいい面もあります。それが可塑性です。この可塑性を生かす方法が色々あります。例えば、現実に我々が使っている茶碗などの焼き物は、それが割れて使えなくなったとき、捨てるのではなく粉砕し、他の粘土に混ぜてベントナイトとブレンドすると、焼き物の粘土として使えるのではないか。

それから建築用の煉瓦。中之島公会堂の赤煉瓦は有名ですが、あれは間違いなく英国のオックスフォードクレイ、ロンドンクレイです。詳しい情報はありませんが、建築用材として海底土を使うということだけわかっています。おそらく粘土としてはそれほど古い歴史のものではない。普通の陸地で貝殻があるように、ごく短い期間で隆起したものか、潮が引いた所の粘土で、採取そのものは簡単だと思われます。また、水簸の工程が相当工夫されたものではないかと考えられます。そういうことから考えていくと、海底土の利用によって、中之島公会堂の煉瓦に負けないものが作られると考えられます。そういう将来の海底土の利用方法も研究しています。

 

●登り窯の工夫

焼き物には自然釉のものと釉薬をかけたものがあります。自然釉のものは登り窯で焼いたもの。燃焼室に薪を入れて温度を上げ、上の部屋で作品を作るという方法を取りますが、私どもの登り窯は、第一室(燃焼室)でも、上の部屋と同じくらいの量が入りこの部屋単独でも作品ができます。古い窯に穴窯というものがありますが、丹波の蛇窯を横にしたような考え方で、三人位でも一度に使えることを考えて作りました。

また、今から100年近く前、大阪港の護岸工事のために使った松材を引き抜いて、薪として使っています。松材に含まれる塩分のおかげで、釉薬のつき方が一般の物とは異なります。登り窯では塩窯と言って温度が上昇したときに食塩をたくさん入れてナトリウムで色を作る方法があります。それと薪の灰とが混ざりあって斑点になりました。釉薬とは違った魅力で、難波津焼の特徴でもあります。

最近、木材では食べていけないのと、間伐材が売れないという理由で、杉や桧の山が手入れされていません。それに目をつけて杉や桧でも温度が保てる窯の構造にしています。しかし、登り窯は全国的には閉まってきています。ここでは消煙の装置を付けているため臨場感はあまりありませんが、自然の作品が生産されています。

 

●質疑応答

【質問】上海からのカリオンについて。

【回答】海底土だけでは高温になると溶けてしまいます。それを防ぐために耐火度の高い珪酸分やアルミニウム分をたくさん含んでいる粘土を加え、普通の焼き物に仕上げています。アルミニウムを入れるとしっかりとした粘土になりますがそれの代わりに質がよく安い中国のカリオンを使っています。できれば含有金属の少ないものが欲しい。鉄、マンガンを含むと色がつくからです。

 

【質問】粘土の原価は。いい粘土との違いは。

【回答】私どもの粘土の原価は安い。焼き物は化学ではありません。風土、風合いを感じるもの、そういうことが焼き物にとって大事。作品としていい雰囲気の出る粘土がいい粘土と考えます。有名な産地の粘土が科学的にいい粘土とは限りません。粘土の価格は産地の伝統で決まると思われます。また、質の問題と文化としての違いがあります。舞洲の場合は、耐火度と収縮性では備前に勝っていますが、風合いはその地域の文化だと思います。難波津焼には歴史がありません。焼き物は作る作家の人格、作家としての力量で決まります。そのためには時間がかかります。また、淀川には葦が生えていますが、淀川の葦には十分ナトリウムが入っています。この葦の灰や、河口の沈殿泥を釉薬として生かすことを研究しています。

 

舞洲陶芸館見学

案内:西川氏/舞洲陶芸館 職員

 

登り窯、粘土生成室、作品展示室などを見学した。

 

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大阪で唯一の登り窯

 

 

 

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