従業者の業種構成を見ると、図表1-5に示すように卸売・小売業・飲食店26.9%、サービス業24.5%、製造業22.3%が多い。呉市は工業を主産業として発展し、現在ではその比率は広島市の12.6%を大きく上回っているが、他方で、福山市(26.0%)、東広島市(30.1%)を下回っている。特に、近年の産業構造の変化にマッチする形で内陸型工業の集積の拡大を図ってきた東広島市と比較して、呉市製造業の雇用吸収力の低下が伺われる。
呉市製造業の従業者数を見ると、長期にわたって減少基調にあった後、平成にはいってやや増加基調で推移したが、平成3年の2.2万人をピークに再度減少傾向が見られ、平成8年には初めて2万人をわずかに下回る水準になっている。従業者べースの工業構造を見ると、一般機械器具、鉄鋼、輸送用機械器具、金属製品業の4業種の従業者が多く、全体の約7割を占めている。しかし、このような製造業は、加工、組立、生産、物流など幅広い分野において技術力、情報力、人材等の経営資源が長年蓄積されてきているが、経済環境の悪化による影響を受けて、一般機械器具以外の業種は、近年は従業員数、出荷額ともに減少している。呉市では、全事業所数の98.6%を占める中小企業の多くが、このような特定業種を中核として依存度が高い生産体制を形成しており、中小企業の経営基盤が脆弱なものになっていると言えよう。石川島播磨、日新製鋼といった呉市を代表する大手企業では、近年、従業員数の減少が見られる。しかし、工場内の資本投下の状況を見ると、有形固定資産残高の規模は平成3年度から8年度にかけて石川島播磨の呉工場では26.5%、日新製鋼の場合は6.3%の増加となっている。また、呉市内の主要工場は、長い歴史を有する基幹工場であり、例えば、石川島播磨呉工場では、各種船舶の建造・修理、ジェットエンジン部品、陸舶用ガスタービンの組立・運転、大型橋梁、ダムの水門、鉄骨、荷役設備など極めて多様な分野の生産技術、研究機能を有している。それだけに、この様な技術、設備、人材の多様性という点では、今後地域にとっての新事業の創出などについて重要な役割を果たすことが期待できる。