一般に広域行政という場合には、広域市町村圏の区域で行われることが多いが、これがどこの地域にも最適とは限らない。広域連携の必要性は、前述のように、地域住民の日常生活圏の拡大も背景の一つとなっている。広域で連携して施策を行っていく際の範囲は、できるだけ地域住民の日常生活圏の範囲と重なることが望ましい。
本地域の2市3町は、大津市、志賀町とともに、「大津湖南」という広域市町村圏を構成している。本地域も大津市や志賀町も、より広域的には京都を中心とする大都市圏を構成しており、京都市に一定の通勤・通学者を送り出していることから、共通の生活圏にあるとも考えられる。しかし、より詳細にみると、同じ広域市町村圏に属しながらも、本地域と大津市や志賀町との住民間の直接の結びつきは必ずしも強くない。通学や買物などに着目すれば、日常生活圏としては、むしろ本地域の2市3町で一つのまとまりを形成していると見た方が自然である。
また、本地域の総人口30万人弱という規模は、保健や建築などある種の広域行政の分野においては、ちょうど一つの広域圏として標準的な規模といえる。例えば2次医療圏は人口30万人を基準に設定され、保健所も30万人に1ケ所というのが設置の目安であり、本地域も実際に2市3町で保健医療圏域を構成しており、保健所の管轄もこの圏域と合致している。建築の分野でも、建築主事は概ね人口25万人超で1人置くぐらいが妥当とされており、土木事務所の管轄区域も、やはり2市3町の区域と重なっている。
このように、日常生活圏としても、広域行政を行う上での規模という点からも、本地域の2市3町はほどよいまとまりを持っているということができ、広域連携という手段によって行財政の合理化・効率化を図り、高度化・多様化するニーズに応えていこうとする場合には、この範囲で連携を図っていくことが最も効果的と思われる。
さらに人口30万という規模をもってすれば、京都に近接していても、十分に市場としてのアピール力を持つものと思われ、今後、地域の活力を維持し、さらに高めていくためにも、2市3町の連携は意義深い。
なお、広域連携によってその圏域内の市町がすべて同じ色で塗りつぶされ、没個性化してしまうのではないかとの懸念が出されることがあるが、連携のもとで各市町の独自色が消えてしまうということは、まずあり得ない。むしろ、複数の市町が連携する際には、それぞれの市町の間での役割分担・機能分担の視点も必要になり、かえってそれぞれの市町の施策の独自性が、重要になってくる。2市3町がそれぞれの独自性を十分に活かしたまちづくりを今後も続けていくためにも、地域の活力を維持し伸ばしうる広域連携の意義は、大きい。