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しかし、遠州鉄道がすべての投資を行い、かつ乗り入れを行った場合、試算によれば、乗り入れ部分の経理は経常損失として、年々膨大な額の赤字を発生させる。この赤字は、決して、経営努力ではカバーできない数字であるとともに、年々累積して、数年で初期投資額を超える。この収益見通しが、遠州鉄道をして事業実施に踏み切れなくさせている最大の原因である。つまり、ケース1の「遠州鉄道単独整備論」は、鉄道事業者である遠州鉄道に極めて過酷な条件の下での事業実施を迫るもので、現実的な提案とはなり得ない。

 

イ ケース2 −天竜浜名湖鉄道が単独で整備する。

この案は、本件は遠州鉄道の一方的乗り入れだが、大方の施設は、天竜浜名湖鉄道の所有であるため、所有者である天竜浜名湖鉄道が、自分の設備に投資を行い、乗り入れる遠州鉄道から乗り入れ料を徴収する形で、投資の回収を行うというものである。

鉄道の乗り入れの場合、施設の整備は、所有者が行うことを通例としていることを考慮すると、当然な意見である。関係機関に対するヒアリング調査でも、「本件の整備は、所有者である天竜浜名湖鉄道が行うのが順当である。」という意見で一致した。しかし、天竜浜名湖鉄道の経営は、平成10年度の経常損益が1億2,800万円の欠損と見込まれるなど、極めて厳しい状況にある。このため、平成10年12月には、経営基盤強化計画(長期再建計画)を策定し、懸命の経営努力と県及び沿線市町村の支援で、平成18年以降の黒宇転換を目指しているところである。

こういった経営状況にある天竜浜名湖鉄道に、長期再建計画に基づかない、多額の投資余力がないのは明らかである。また、仮に、万が一可能であっても、投資額のすべてを施設使用料として、乗り入れてくる遠州鉄道に振り替える可能性が高い。こうなると、遠州鉄道にとっては、ケース1の遠州鉄道単独整備論と同じことになる。

したがって、このケース2も、これ以上進展する案とはならない。

 

 

 

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