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松江市

松江市は島根県の県庁所在地であり、江戸時代から城下町として栄え、人口約15万人の山陰地方の中心都市である。旧城下を中心にまちが発達し、賑わいをみせていた。昭和26年「国際文化観光都市」として観光都市としての整備を行ってきたが、近年松江城を中心とした観光スポットづくりに取り組み、内堀をめぐる「堀川めぐり」などに人気が集まっており、年間約400万人が松江城周辺を訪れる。ただ、松江城に近い中心商店街は観光客向けの店づくりなどはされておらず、市民向けの商店街として成り立っている。

昭和50年代までは人口の伸びとともに順調に販売額などを伸ばしてきたが、以降は頭打ちの状態にあり、平成6年に松江駅南側に「松江サティ」ができて以来、中心部である駅前のジャスコ、ダイエー系のスーパーなど大型店が撤退した。松江サティは松江市の年間小売販売額の20%近く、売り場面積では10%を占めているが、全市の販売額はサティができる前とそれほど変わってなく、限られたパイの中での争いということになっている。したがってサティが20%を占めているということは他の店舗(主に中心街)の販売額が20%ダウンしたということになる。

サティの進出が中心市街地商店街の衰退を大きくしたとしても、衰退自体は「自然に」起こっている。平成10年9月に市が策定した「中心市街地活性化に関する基本計画」の中でも、現状の分析として、自家用車の普及による行動圏域の拡大、消費者ニーズの多様化、消費の低迷をあげている。つまり、商店街として集客する魅力が低下した、ということである。

しかし、サティ進出や国鉄跡地の駅前整備事業の効果もあり、駅前の集客は高まった。また、中心部(殿町)にあった地元資本の百貨店が駅前(ジャスコ跡)に移転し(平成10年)、中心街の空洞化が激しくなった。中心部の体力は落ちている。松江市の代表的な中心商店街である殿町商店街は47店舗中10店舗ほどが空き店舗になっている。歯抜け状態となり駐車場になっているところもあるが、この駐車場も商店街のためのものではなく、県庁や事業所へ通う人のための月極駐車場となっている。

「中心市街地活性化に関する基本計画」の考え方の中には、「新たな人口増が見込めない現状において「商店街」の再生は難しく、そこに来る人、住む人にあわせた「商業地」づくり、つまりその場所が置かれている状況(観光客など他から来る人が多いのか、あるいは居住者が多いのか)による、その場所にあった環境づくり」がある。したがって観光客が「近くに来る」殿町商店街は「商業・観光・文化の共存」するまちと位置づけられ、殿町地区にある旧日銀店舗は観光目的に改装されるなど、事業を進めている。また、他の地区でも「高次都市機能の拡充」と銘打ち、公共住宅などの供給など人口の回復などを図っている。しかし、殿町商店街などでは、肝心の商店主らがその計画どおりに意志が統一されているわけではなく、「市が勝手にやった」という思いを持っている人もいる。

商工会議所ではそのあたりの調整をTMOでできないかと考えている。また、活性化支援として、チャレンジショップを行っている(市・県の補助の窓口となる)。チャレンジショップは殿町に「殿町工房」として平成10年5月からオープンしている。公募と勧誘により1〜2カ月おきに入れ替わり、1年間の計画をあらかじめ立てて入居してもらっている。

これは、地元商店街に何かやってくれといってもなかなか進まないので、自分たちでやってみせて、目を開いてもらおうという効果を期待してのものである。新聞などにも取り上げられ、評判もよいことから、周辺の商店の青年部がショップの近くでビアガーデンを開くなど動きは出つつある。また、起業家の支援ということで、チャレンジショップを契機にしての新規出店を促してもいるが、チャレンジショップを行ったものの中から殿町商店街に出店したケースもある。

また、中心部への回遊を狙って、サティと駅前と中心街を結ぶ「ショッピングバス」(無料)を平成10年12月から始めている。利用者は1日160人で女性高齢者が主な利用者である。サティと中心商店街、市なども経費を負担している。

 

 

 

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