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・桜島桟橋(桜島行きフェリー乗り場)→200mほど南へ新築(平成9年)

このうち鹿児島駅の鹿児島本線の終着駅機能が西鹿児島駅に移って以降、上町地区の衰退が激しくなった。当時は鉄道の時代であり、道行く人の数が激減し大きな影響を受けた。

また、桜橋桟橋の移転はわずか200mであるが、その影響は顕著に現れてきている。桟橋の建物(フェリー乗り場、食堂街など)の新築に伴い、桟橋から国道をまたぐ歩道橋が付け替えられ、中心街へ向かう人の流れが一筋変わった。そのために人の流れが変わり、従来から桜島桟橋から下りた人を目当てにしていた商店街からは、県庁の移転よりも桟橋の移転に対する苦情が多い。一方、新しく人の流れが出た通りには商業の集積がない。

県庁の跡地の利用やその他の活性化策については順次検討され、県庁跡地は県民交流センターとして活用される。駐車場300台、1日の来客2,000人が見込まれている。県警本部、自治会館跡は市で購入し利用を考えている。また、一足早く新県庁方面に移転した県農協連の跡は再開発され、1階、2階が店舗、3階以上が住居、別棟にホテルという複合施設(アーバンポート21)になっている。

また、上町地区近くの海岸がウオーターフロント計画により水族館が開設されるなどの整備が整いつつあり、新たな集客も見込まれ(水族館は平成9年に120万人来館)、これからは今までと違う客層(若者)に対して、新しい商売の仕方(オープンカフェなどおしゃれなもの)をどうアピールしていくか、今までの山側(駅、官公庁側)を向いた商売から反対側(海側)を向いた商売にどのように対応していくかが課題となっている。

公共施設などの移転に伴う影響について、影響があるのではと語られることは多いが、実際にどうかというデータはなかった。その点でこの鹿児島市上町地区の事例は貴重なものである。また、公共施設の移転に伴う「後始末」というべき活性化計画を作成した自治体もあまり例がない。ただ、これからの方向性について、若い経営者は検討を重ねているが、商店街の幹部の動きはみえない。したがって消費者の意向や若い人の声が届くような仕組みづくり、ソフト的な展開が求められている。現に地区内に再開発ビルができ、下層は店舗、上層が居住スペースの複合ビルがある。居住スペースはすぐ完売となり、店舗も開店時は多くの来客があったにもかかわらず商店主らは今は全然売れないと嘆いている。しかし、住民らは、商売の仕方が卸売りの時代そのままで、新住民向けの商売(一箱単位でなく小分けしたものなど)をせず、商売の仕方が悪いとの不満がある。このあたりのギャップを埋めなければ、新しい集客施設や活性化の方策が提示されても意味をなさないことになる。

 

松任市

松任市は石川県の中央部に位置し、金沢市に西面した人口約6万5,000人の都市であり、能美郡地方の中心都市である。昭和45年に市制を施行して以来、金沢市のベッドタウンとして順調に人口は増加している。

松任市は金沢市の「郊外」として位置づけられ、松任市郊外(中心部ではない)での大規模住宅団地の開発や金沢市の都市化に伴う工業団地、物流拠点の移転など企業誘致を図ったことにより、郊外にある住宅地から郊外にある工場へ、あるいは金沢市へと、逆に金沢市から国道8号(金沢市郊外から松任市郊外を通るバイパス道路)を通り松任市郊外の会社へと、人の流れが松任市の中心部へ来ない(来る必要がない)、郊外から郊外を結ぶ都市構造となっている。したがって通勤や行楽に便利な国道8号沿いに大規模店が立ち並び、とくに平成7年に店舗面積約2万m2(現在はいずれも増床し約3万m2)のショッピングセンター2店が相次いで開店し、中心商店街は大きな影響を受けた。このショッピングセンターの開店は松任市ばかりでなく金沢市の中心商店街、金沢市近郊の大規模店の客足が減るなど、広域で影響を与え「北陸流通戦争」とまでいわれた。

 

 

 

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