き店舗が目立ち始めている。店舗を貸したい人が多く出ており、この結果、地価やテナント科は低下している。しかし、地上げしたような所では、地価は5分の1ぐらいになっているようであり、土地を売ることができず、店舗をすることもできない状況にある。商業者は個々には対処しようとしているが、全体としての共同歩調はとれておらず、現状では、商店街全体でもどうにもならなくなってきている。中心部でがんばっているところは何か特徴を出しているところであり、そういうところは、同時に、ショッピングセンターにテナント出店し、多店舗展開でバッファーにしているところが少なくない。
金沢市は、北陸の中心都市として栄え、伝統のある老舗が少なくないという特性を持つ地域独自の課題として、地方の中小都市でよくいわれるような、「若者の集まる街づくり」といったレベルではとても間に合わない状況である。これに対処するには、中心部がブロックでまとまる必要があるが、これまでにそのような形でまとまった事例はない。一つの事業を考えたときに、国が4分の1、県が4分の1、市が35%を補助し、残りの15%に無利子の高度化資金を導入すれば、商業者の当面の直接的負担は3%にすぎない(仮に10億円の事業としても、3,000万円を集めればよいことになる)。これでできなければ、おそらく何もできない(まとまれる事業が必要であるが、その事業の結果を全て商業者に責任を負わせるのは無理な状況である)。
市内の中心市街地商店街組合の取組状況は、商店街組合毎の格差が大きい。竪町のように先行しているところは、改造計画を全て自前でやっている。これに次いでは、個別に検討を始めたところ、ゴーイングマイウェイ型、動きのみられないところ、など多様である。
このような状況に対処するため、金沢市では、平成10年10月に第3セクターによるまちづくり機関(TMO)を設立している(設立は10月7日、資本金4,000万円。出資比率、金沢市42.5%、商店街・商業者など25.0%、大型店など20.0%)。TMO設立の最大のメリットは、特定の商業者を選定して相手のニーズにあわせて重点的な支援体制を組むことができることである(行政とは異なり、相手の資質を問わない平等性からの脱却が可能となった)。従来の中心市街地の整備はハード中心であったが、人を集めるためにはソフトが重要になる。TMOは事業としてイベント、ソフト事業を行う。
TMOは商業者に対しては、何をやるべきかを指示はしない。何をしたいのかを確認したうえでこれを支援するだけである。やる気があるとは、「金」か「知恵(ビジョンづくり)」か「人」かの何れかを出していることであり、これがないとがんばっているとはみることはできない。商業者は、理屈のうえでは、先ずこれを表明する必要がある。例えば、空き店舗や空き地を利用するために、権利者と地道に交渉するような動きが、やる気があるとみなしうる。
TMOは、要請があって初めてどのような支援ができるかを検討する。TMOは、公的補助を引き出すために設立するという色彩が強く、単なる潤滑油と考えた方がよい。現在、外圧があるから商店街はまとまらざるを得ない状況にある。そして、商店街のまとまりが強く、力を付けていけばTMOは必要ないといえる。その意味で、自然発生的に生じてくるTMOがベストである。
空き店舗を埋めるということは、TMOの役割になるが容易なことではなく、基本的には個別対応しかあり得ない(TMOだからといって、ウルトラCはあるはずがない。既存店舗にアプスになるという評価のしてもらえるものしか協力を得ることはできない)。
・商店街に必要な業種を決定……金沢市では、市の所有になった空き店舗(6軒)でギャラリーや高齢者生きがいショップ、周辺山間部の農産品ショップなどを開設している。
・テナント入店する場合の料金を決める(公的資金や補助金の制度の導入方策を決める………デベロッパーがコーディネイトした場合は、公的資金が入らない)
・募集する(TMOは募集のPRの機能を果たす)
TMOが中心市街地活性化の推進者になることは、現実的ではない(商店街・商業者がやらないところにTMOが手を着ける必要は全くない)。中心市街地の活性化には、身銭を切り、権利関係の調整や費用負担の問題で自分が割を食っても良いと考える個人としての調整者を中心に数人(2人でも良い。3人居れば十分。)の支持者があればよい。