以上のように、桑名市の商業は県平均を大きく上回る高い伸びを示しているが、他方で、売り場面積の大幅な伸びにみられるように、競争環境が激化していることがうかがわれる。
平成10年10月現在の大型店の状況をみると、現営業店舗として第1種8店舗、10万1,000m2、第2種19店舗、2万3,000m2で、合計27店舗12万4,000m2となっている。そして、結審店舗・計画店舗が計6,000m2ある。大型店比率が74.1%(第1種だけでも60.4%)を占めている。
最近の大型店の展開状況をみると、平成7年3月にマイカル桑名(店舗面積5万3,000m2、核店舗はニチイ・3万2,000m2、駐車場5,000台)が市の郊外部に立地している。そして、1年後の平成8年3月には市内中心部の鉄工所跡地にアピタ桑名(同1万5,000m2、ユニー・1万m2、1,000台)が開店している。
他方で、桑名駅前のパル(同1万4,000m2、ジャスコ・6,000m2、210台)が平成9年7月に閉店している。パルは昭和47年に、全国第1号の国指定再開発事業として開業し、当初は他に大規模な競合店がなかったこともあって全盛を極めていた。しかし、駐車場がなかった、オープン後リニューアルしていなかった、などの要因で昭和60年以降に相次いで閉店してきた郊外店との競争のもとで核店舗のジャスコが撤退し、開店するに至ったものである。
地域商業への影響度については、マイカル桑名は規模が大きいだけに、オープン後半年ほどはそれなりの影響があったが、開発コンセプト自体が物販よりも映画館・ボウリング場・アミューズメント施設までが合体した複合型ショッピングセンターとしてアミューズメントを重視した時間消費型施設であるため、現在では地元商業者との棲み分けができているようである。むしろ土日型であるため3分の2の車が県外ナンバーであるなど県外客の吸引という点での効果が大きくなっている。そして、サンシティでは核店舗のジャスコが価格訴求型のビッグバーンに業態変更するなど、消費者の選択肢を拡大するような新しい動きがみられる。
地元商業者との競合という点では、アピタ桑名が生鮮食品に特化していることから土日のまとめ買いが行われるなど影響が大きい。この開発は当初2.8万m2で検討されていたが結果的に1.5万m2に縮小されたため、地元企業約100店舗で作っていた準備組合に参加していた店舗が入居できないという状況になってしまった。
大規模店立地に伴う影響については、マイカル桑名開店後4ヶ月経った平成7年7月に商工会議所が会員商業者に対してアンケート調査を実施している。このアンケートは267店舗からの回答があり、回答の傾向は以下の通りである。
・大型店の進出による影響……「かなり影響があった」26.2%、「やや影響があった」34.8%で61.0%が何らかの形で影響を受けている。「とくに影響はない」というところは36.8%である。
・影響の内容……「売上高の減少」45.7%、「販売価格の低下」18.4%である。
・売上高の状況……マイカルの開店を挟む1〜3月と4〜6月の売り上げを比較すると、「減少」が63.9%、「変わらない」19.0%、「増加」17.1%である。減少幅は、1割が26.3%、2割が22.4%、3割が9.8%、4割以上が5.4%であった。他方、増加幅は、1割が5.9%、2割が6.8%、3割以上が4.4%である。売上全体の平均では7.0%の減少になっている。ただし、減少の理由については、「個人消費の停滞」を挙げるものが34.4%と多く、「近郊大型店の開店」20.2%、「マイカル桑名の開店」12.4%である。
そして、この半年後の平成8年1月には、再度マイカル桑名の影響とアピタ桑名の予想影響度に関するアンケート調査が実施された(回答:317事業所)。
・売上状況………1年前と比較した売上をみると、「減少」が72.8%、「変わらない」13.6%、「増加」12.6%もで、減少の店舗が増加している。減少幅は、1割が27.4%、2割が29.0%、3割が12.3%、4割以上が4.1%であった。しかし、減少の理由については「消費の停滞」が52.4%と多くなっている。増加店舗では、その理由として「顧客管理の徹底」32.5%が挙げられており、個店の努力の方向を示している。