商店街には今の現状を何とかしようという意識はあると思うが、金は出したくないようだ。また店のあるところには住まず、後継者はいない。過去の遺産で生活しているといってよい。商店街が一致団結して事に当たる雰囲気にない。商店街同士のいさかいも絶えない。ほとんど商店街の形態をなさないところや活性化に興味のない商店主がいる。しかし、行政としては「商売をやめなさい」とはいえない。集積の魅力づくりは商店主本人のやる気次第である。中心街の本町、銀座周辺は平成になってからも毎年のように再生に向けての調査を進めてきたが、ほとんど絵に描いた餅で終わってきている。来街者調査も平成元年9月に行って以来やっていない。
時には空き店舗などを貸してほしいとか譲ってほしいとかいう案件もあるようだが、絶対に貸そうとしない。息子が帰ってくるかもしれないとか、また商売するからとかいっているようである。貸すにしても法外な(時代に合わない)賃料を要求し、貸す気があるとは思えない。つまり、商売がよかった頃の思い、感覚そのままでいると考えられる。
市としては、中心街にある市民病院の移転(これも市南部に移転・跡地利用不明)で金がかかり、中心市街地再活性化だけに金をかけるわけにはいかない。要は商業者の意欲の問題である。
彦根は江戸時代からの城下町で、とくに繊維・紡績が栄えた昭和30年台から40年にかけて、大変にぎわった。そのころの遺産でまだ食べていけるほど儲かったわけだが、そのころの意識が抜けないので殿様商売になってしまっている。年寄りが生き甲斐のようにやっている商売かお得意さまでやっているところが多い。しかも、自分一代で終わりと思っているから、新たな資本投下などは思わないという状況である。長浜や近江八幡などはそのころの集積がなく空襲にもあっていないから、古い建物が残り、今はそれが役立っている。彦根などはそのころに小金をためて、みんな小さなビルにしてしまい、それらが古くなって、寂れた感じになってしまっている。城下町とか10万人規模のところが現在苦しいのはおそらくそうした事情だろう。
中心部は狭く車での来客には不都合な面もあり、車でいって、すべて1か所で買い物ができるシヨンピングセンターは魅力的であろう。そういったことが中心部の衰退を招き、客足が少なくなり資本投資もできずにいると、商品に魅力がなくなり、一段と客がいなくなる。この悪循環を繰り返しているといえる。
彦根市の事例は、行政や商工会議所レベルでの危機感は強いにもかかわらず、商業者のまとまりがつかない、中心市街地としての取組の焦点が絞れないという状況の下で、商店主らに当事者としての意識がないままに「流行」として中心市街地活性化に取り組んでいる状況から、動きがみえてこない事例といえよう。
桑名市
桑名市は、平成9年の人口10万6,000人であり、昭和60年の人口9万5,000人から12年間で12.0%増加している。平成9年には市内中心部に居住する人は4万5,000人(42.2%)であり、郊外地居住者が過半数を占めている。
桑名市の平成9年の小売り商業の概況は以下の通りである(平成3年との比較でみる)。
・商店数……1,394カ所であり、平成3年の1,473カ所と比べて79カ所の減少である。
・従業員数………7,722人であり、3年の6,183人から24.9%という高い増加を示している(全国は6.0%増、三重県は12.7%増である)
・年間販売額………1,495億円であり、3年の1,276億円と比べて17.1%という高い増加を示している(全国は5.1%増、二重県は4.3%増である)
・売り場面積………16万7,000m2であり、3年の12万2,000m2と比べて37.0%という販売額の伸びを上回る高い伸びを示している。この結果、1m2当たりの販売額は104万円から89万円へと15%の減少になっている。