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現在までに憲法コンメンタールは3種類ほど出ているが、地方自治に関連する条項のコンメンタールでヨーロッパ地方自治憲章にふれたものは皆無である。地方自治に関連して、憲法上の諸規定の適用にあたり、この地方自治憲章の解釈がかかわったことがないのであろう。後に見るように、具体的事件において、地方自治憲章が参照されるような事例が生れてくれば、事情はまた違ったものになろう。

ロシアの地方自治法の現在についてふれた文献においても、地方自治憲章への言及はそれほど多いわけではない。一般には、ロシアの地方自治法の特徴づけを地方自治憲章の参照によってオーソライズするものが多い。クターフィンとファジェーエフの共著になる『ロシア連邦の地方自治法』(1997年)は、地方自治の概念や制度の個々の問題ごとにヨーロッパ地方自治憲章を参照し、格好の地方自治憲章の解説書にもなっているが、教科書であるためか、ロシアの地方自治法制定過程への影響や地方自治法自身に孕まれる問題点への言及がない。

ロシアの地方自治法制の中心的な論点のひとつとなっている、国家権力機関と地方自治機関の相互作用の原則をめぐって論じたサモレートヴァ(上院議員秘書)の議論は、問題をヨーロッパ地方自治憲章との関連で論じた数少ないもののひとつである(12)。彼女によれば、国家権力機関と地方自治機関の関係について、ヨーロッパ地方自治憲章で指摘されている地方自治体の活動に対するすべての行政監督の必要性に着目して、ロシアはこの点について法的にも組織的にも未整備な段階であると位置づけている。さらに「地方自治」概念にかかわって、ロシア憲法が地方自治を規定するにあたり、地方自治憲章のいうところの「法律の範囲内において」なる表現を入れないで、「地方自治は、その権限の範囲内において、独立である」(第12条)としたのは、正しくなかったという。連邦の中央権力による「自立的」傾向の強い構成主体に対する法的規制をつうじて地方自治の実現を図るという現在のロシアが直面している課題のもつ矛盾的構造がここでも問題とされていることがわかる。

 

 

 

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