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本稿は、それらの断片的な情報を手掛かりに、ヨーロッパ地方自治憲章の視点からのロシアの地方自治法の問題点を析出し、それと関連づけて地方自治体における行財政の自主権をめぐる裁判事例を紹介しようとするものである。

 

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ところで、最近のロシアにおける地方自治の現状ほどのようなものであろうか。1996年以来の地方自治体における選挙の実施により、「ウドムルト」問題(3)などを介在させつつではあるが、地方の公選の首長や地方議会はその制度的枠組みを整えてきた。地方自治の確立は、現在のロシアの政権にとっては、ヨーロッパの外圧を利用してでも成し遂げなければならない課題だからである。それは構成主体の力を弱め、集権的な立憲国家を樹立することを、現在のロシアが、市場経済体制の確立や当面の経済危機からの脱却にとって不可避としていることと関連している。実際、構成主体における「地方自治法」や地方自治体における憲章の制定や整備がすすみ、住民投票制度などもいくつかの自治体で実施されたりもしてきた。首長制の導入により、ソビエト制とは違って代表機関=議会の地位が相対化されたこともあり、住民投票などの直接民主主義の形態が重視されることによって、旧来の制度からの転換にともなう変化の意味あいを和らげバランスをとった結果の現われでもあるし、首長制導入への抵抗の反映をそこに見てとることもできよう(4)

例えば、1996年以降の住民投票では、各地で原発建設の再開の是非や放射性廃棄物の処理場の建設の是非をめぐって行なわれた事例が目につき、コストロマ州や沿海地方のシコトフスキー地区では、住民の9割が建設反対票を投じ、同じ沿海地方のボリショイカメニ市では投票率が過半数に満たず不成立とはなったが、建設反対票がやはり9割を越し、市議会が建設反対を決議することを促した。住民自治の発揮の事例として注目しておいてよいであろう(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の報道による)。ロシアの地方自治法は、住民投票の結果について、その法的拘束力を認めていることも忘れてはならない。この点についての詳細は、稿を改めてその実際と問題点について論じたいと考えている。

しかし、日本のマスメディアも報道しているように、極東のウラジヴォストーク市の事例のように、市長選挙や市議会議員選挙が長期にわたって成立せず、地方自治の枠組みを設定する最初のところで足踏みをしているところがないでもない。その事例を新聞報道により、簡単に紹介しておこう。

ウラジオヴォストーク市では、この1月になって、五年余りの間に14回も不成立や延期を繰り返してきた市議選が行われ、22の選挙区中16の選挙区でようやく選挙自体が成立(投票率25%を超えない場合は選挙不成立)し、正式な市議会が発足する見通しがたったという。

 

 

 

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