地方選挙の中央選挙管理委員会は基礎自治体議会議員、区議会議員、基礎自治体の首長、構成区長、区長の選挙に参加する政党、政党連合の登録とその公表を行う。ここでは国政の場合と同様に、政党の構成要件を定めた政党法の趣旨に照らして登録の可否が判断される。
無所属議員の場合は基礎自治体の議会議員、区議会議員の場合当該基礎自治体、区の有権者100人の署名、人口10万人以上の基礎自治体の場合は500人の署名が必要である。基礎自治体、区の首長の場合、有権者500人の署名が、構成区長は、有権者の5分の1の署名が求められる。
重複立候補は認められている。地方自治体の首長候補は同時に地方議会の議員候補にもなりうる。ただし、首長に選出された場合、同時に議員職に就くことはできない。国政との関係でいえば、国民議会議員は地方自治体の首長候補になることはできるが、もし当選した場合は国民議会議員職を辞さなければならない。
選挙活動においては国政選挙の場合と同様公用語の使用が定められ、たとえ母語であってもブルガリア語以外の使用は禁じられている。また、少数民族に対する特別な規定は定められていない。
基礎自治体と区の議会議員選挙は4%条項付きの比例代表制によって行われる。一方首長選挙の場合は、第1回投票で有効投票の過半数を獲得した候補者が当選ということになる。第1回投票でどの候補者も有効投票の過半数を獲得しなかった場合、第1回投票の上位3候補の間で第2回投票(決選投票)が行われ、最高得票数をあげた候補者が当選と判断される。1995年の選挙では決選投票に参加できる3人の候補者のうち1人が第2回投票を辞退するケースが散見された。とくに首都ソフィアでは、民主勢力同盟の候補者ソフィアンスキと選挙管理内閣ではあるが初の女性首相となった候補者インジョヴァがいずれも第2回投票に進出したため、インジョヴァが辞退し、両者の票割れによる社会党系のソフィア市長の誕生を阻止した。
首長選挙を別にすれば地方選挙は制度面では国政選挙と類似している。とくに地方自治機関として地方制度の根幹をなす基礎自治体の議会は、選出する議員数こそ違うが国政レベルと同様政党中心の選挙である。比例代表制はなるほど、基礎自治体を1つの行政・地域単位と考えるならば、その地域内の住民の意思を反映したものといえるかもしれない。しかし現在の基礎自治体は、かつてそれぞれ単独の基礎自治体だった構成区の集合体である(たしかに社会主義期には、基礎自治体も上位の人民評議会の指導監督の下にあったので、住民の意思決定機関として機能していたとは考えにくいが。)。構成区の住民の視点に立てば統合によって基礎自治体の行政機関所在地がより多くの人口を集め、党派の違いはあれ多くの地元議員を議会に送ることで、基礎自治体内部で行政機関所在地(当該基礎自治体の住区のなかで最大の人口をもつ場合が多い)とそれ以外の構成区(予算は分配されるが)の格差が広がるように見えるのではないだろうか。