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ただ、筆者がニコアラ氏のインタビューを聞く限りでは、カルパチア・ユーロリージョンは萌芽の段階にある。発展していくには、相当の時間を要しよう。しかし、既述した如く、問題の重要性と民族問題解決の鍵がここに存在することも確かであり、長い目で見守っていく価値は十分ある。

 

8 今後の展望と問題点

 

ルーマニアの地方自治制度の行方を決定する諸要因として、少なくとも、以下の4点を指摘できる。

 

(1) 政局の行方

 

まず、ここで検討した地方制度に関する現政府改正案が、早急に、しかも現状通り議会で可決されるか否かである。チョルベャ政府が政令という形で出した教育法及び地方行政法に関する修正が、議会で可決されず、法律として成立しなかったという経緯がある。連立内閣を構成する諸政党の議員が、議会の過半数を占めているにもかかわらずである。また、1996年の選挙で政権が交替し、内外における新政権への期待は大きかったが、経済問題を克服できずにいるため、現政権に対する幻滅が国民の間に蔓延してきている。2000年選挙で揺り戻しが生じ、再び保守・民族系の諸政党が政権に返り咲くことにでもなれば、地方自治制度における逆行も有り得ないことではない。

 

(2) 財源

 

法律で保証された地方自治の実践を阻害してきた最大の要因は、地方自治を保証する地方自治体の自己財源が保証されていなかった点にあった。その点が十分考慮され、現政権の下で地方財政法が可決されたわけであるが、問題はそれがどのように機能し、どのような効果を及ぼすかである。新法の適用にあたっては、著しい混乱が予想される。それは、共産圏諸国において最も中央集権制が強かったこの国では、ハンガリーのように分権化の実験が試みられなかったし、専門家も育っていないからである。

また、地方自治体が財源を確保できるのか否かも不確かである。経済的混迷状態が、今後も疎外要因として立ちふさがっていくであろう。加えて、地方自治体の自己財源確保と関連して、弱者である国民がこれまでにも増して大きな財政上の負担を強いられることになるであろうから、社会不安が益々深刻化していくことになる。果たして、そういう状況下において、地方自治が正常に機能していくのであろうか。

 

 

 

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