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ただ、各地域の負担金だけでは会合費を賄うのがやっとで、十分な委員会活動ができないと言われる。したがって、諸々の諸機関やプログラムから支援金を探し当ててくることが必要であるという。

また、現在のところ、実際に具体化されたプロジェクトは1つだけで、他の委員会はまだ具体化に成功していないと言う。それは1つには言語が複数におよぶため、コミュニケーション上の問題があるためと言う。他の原因は、経済発展度が異なるため、法律上の問題も生じてくるし(例えば、関税上の相違)、財政的問題も浮上してくると言う。

 

(5) 欧米の援助支援

 

東欧諸国がおよそ半世紀にわたってソ連ブロックに繋がれている間に、西欧ではユーロリージョンの模索が試みられ、そのうちの幾つかは著しい発展を遂げた。そこから、西欧のユーロリージョンの中には、東欧地域で始動したユーロリージョンの試みに手をさしのべ、長年にわたって蓄積されたノウハウを提供しようとの意気込みが感じられると言う。例えば、オランダのある研究所はデータを収集し分析して、カルパチア・ユーロリージョンの発展に必要な諸方法を示してくれたという。

 

(6) カルパチア・ユーロリージョンの重要性

 

一般に、東欧諸国は国家志向が強すぎるきらいがある。歴史を辿れば止む終えないといえなくもないが、今もって物事が国家からのトップダウン方式で行われている。これが民族間の不和を解消できない1つの原因であることに間違いない。そういった観点から、火薬庫的存在であるカルパチアにおいて、地域間協力が下から進められていくのであれば、いずれ国家間関係のみならず、民族間関係全体の緊張緩和にも貢献するであろう。これら諸国のいずれにも、民族政党が存在し、民族対立を煽っている。それを信条としているからであろうが、そうすることが彼らの存在を確固たるものにしてくれるからに他ならない。民族対立の扇動は、これら辺境の地ではなく、むしろ首都を含む他の地域で活発である。したがって、地域協力が実績を上げていけば、やがて各々の国民は、彼ら民族諸政党が組織的に流すデマゴギーにも耳を貸さなくなるはずである。

実際、カルパチア・ユーロリージョンに加盟しているサトゥマーレ県では、ハンガリー人がおよそ44%をしめ、同県の県議会議長は政府与党のCDRを構成するキリスト民主民族農民党で、副議長もCDRのメンバーである自由党と、ハンガリー民主連合であるという。地域協力を推進できる条件は整っている。しかも、他のユーロリージョンと違って、ル―マニアにとってもメリットがある。それは、同地域加盟国6か国の内、3か国がEU一番乗りを果たそうとする国家であり、おそらくスロヴァキアが近い将来それに加わることから、その数は4か国に増大する。EUメンバーと直接接触することで、経済的・政治的思意を得ることが期待できる、というのはニコアラ氏の指摘である。

 

 

 

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